「警備嫌い」のローマ教皇、ブラジルは守りきれるか?
ローマ教皇フランシスコは22日、ブラジル・リオデジャネイロに到着した。教皇にとっての初外遊であり、1週間の滞在予定である。
同じ南米のアルゼンチン出身で、庶民派をモットーとしている教皇は、ブラジルでは熱狂的な群衆に出迎えられた。しかしそれだけに、防弾車などの物々しい警備を嫌う教皇の警護について、当局は頭を悩ませている様子だ。
【ブラジル訪問の理由】
最近のブラジルは反政府デモなどで揺れているが、各紙はブラジル訪問の理由として、世界最多のカトリック信者を抱えることと、政界にまで台頭する勢いの福音派(プロテスタント)に押されていることを挙げている。1970年にはブラジルの人口の92%がカトリックであったが、現在は65%にまで減っており、代わりに福音派が22%まで伸びているという。16歳以上のカトリック教徒は57%、福音派が28%との統計もある。
さらに、聖職者の小児性愛問題などでカトリック教会の権威が揺らぐ中、23日の世界青年の日(リオデジャネイロで開催される若者向けのカトリック大会)に合わせて、今回の訪問が企画されたとのことである。
【教皇の気ままな巡幸】
空港に到着後、教皇はヨハネ・パウロ2世銃撃事件以来の伝統である防弾車ではなく、小型のフィアット車やオープンカーを乗り替えて、大群衆に囲まれながら中心街へ向かった。ルセフ大統領との会談に直行する予定のはずが、途中でいきなり警備ルートを逸れて「逃げ道のない」地区に寄り道し、最終的に渋滞で身動きできなくなり、ヘリコプターで脱出したと報じられている。
大統領との会談中には、表でデモ隊と警官隊の衝突が発生していた。
訪問予定にあるアパレシーダ市の寺院駐車場トイレでは、低殺傷力ながら手製の爆発物が発見され、爆破処分されたという。
アルゼンチンでも貧民街を好んで回っていた教皇は25日、最近やっと政府の支配が及んだばかりの大規模スラム街、マンギーノス地区への訪問も予定しているが、専門家が治安部隊は「ゴム弾ではなく実弾を使用するだろう」と警告する危険さである。
【ビッグイベント控えるリオ】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、教皇警護はオリンピックやサッカーワールドカップなどの予行演習でもあると指摘する。元々山と海に挟まれて出入口の少ないリオデジャネイロは、デモ隊あるいは警官隊によって簡単に封鎖され易く、物流などが滞り易い。
また、この日も群衆が至近距離から教皇を携帯電話カメラで撮影する様子が見られたが、最近はモバイル機器やSNSなどの発達によって、群衆が目的地に短時間に集結する傾向も指摘されている。