人気ミュージシャン、音楽配信サービスから怒りの離脱に賛否両論
イギリスの人気ロックバンド・レディオヘッドのトム・ヨークは先週、デジタル音楽配信サービス「スポティファイ」の印税設定が安価だと批判し、自身の楽曲を同サービスから引き上げた。
スポティファイは2008年にスウェーデンでサービスを開始した、欧米で人気の定額制音楽ストリーミングサービス。毎月5~10ポンド(約750~1500円)を支払うと、パソコンやスマートフォンを介し2000万曲が聴き放題となる。現在欧米17ヶ国でサービスを展開しており、無料サービスを含め約2000万人のユーザーがいる。
スポティファイでは、ストリーミング1回につき0.4ペンス(約0.6円)がアーティストに支払われる。つまり100万回のストリーミングでも、アーティストにとっては、わずか4000ポンド(約60万円)の収入にしかならない。
海外各紙は、従来のCD販売等とは状況が異なる、ストリーミングサービスの印税について考察した。
【プロデューサーの賛否両論】
レディオヘッドのプロデューサー、ナイジェル・ゴドリッチも賛同し、「このビジネスモデルでは新人アーティストはロクな報酬がもらえない」と不満を述べた。
一方、ブラーのアルバム「パークライフ」のプロデューサーで知られるスティーヴン・ストリートは、「レディオヘッドは2007年に自身のアルバム「イン・レインボウズ」を無料ダウンロードできるようにして、デジタル音楽の価値を下げた」と指摘。トム・ヨークの偽善を批判した。
スポティファイ側は、「新しい才能と音楽に投資していかなければならない音楽業界に、資金的な支援を提供することが最終目標だ」と説明。さらに「我々は既に5億ドル(約500億円)を著作権保有者に支払ってきた。今年末までに10億ドル(約1000億円)に達するだろう」と加えた。
【英国最大の音楽家組合も不満を表明】
英国最大の音楽家組合も、スポティファイの印税設定は「不公平」だと批判したとガーディアン紙は報じた。同組合は「ストリーミングモデルはアーティストの利益になるべき」と語った上で、「BBC(英国放送協会)と商業ラジオ局が支払う印税をモデルにした、集団賃金契約を推進している」と述べた。
なお英国の原盤権管理団体PPLや著作権管理団体PRSの認可を受けている、BBCラジオや商業ラジオ局では、レコード会社とアーティスト間でフィフティー・フィフティーのライセンス分配があるという。
【プロデューサーの価値は中間層の収入に相当?】
一方フォーブス誌が掲載した識者のオピニオンは、プロデューサーの稼ぎは消費者が決めることであり、これらの議論は「ナンセンス」だと断じている。
資本主義の世界では、消費者が音楽にどれくらいお金をかけたいかが、プロデューサーなどの報酬を決めるのだと断言。結局、消費者はプロデューサーにそんなに払いたくないだけと辛辣に論じている。
※本文中「ストリーミング1回につき0.4ペンス(約60円)がアーティストに支払われる」は、「ストリーミング1回につき0.4ペンス(約0.6円)がアーティストに支払われる」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は訂正済みです。(2013/7/23 17:57)