韓国が米軍に有事の「統制権」を握っておいてほしいわけ
韓国が米国に対し、2015年末に予定されている「戦時作戦統制権の移譲」を延期するよう求めたと報じられている。朝鮮半島有事の際、事実上米軍が韓国軍を指揮する現在の形が、維持されることになる。
韓国の金寛鎮(キム・グァンジン)国防相が、6月1日、ヘーゲル米国防長官との会談でこれを提案したと、両国関係者らが17日に明らかにした。
合意されれば、延期は2回目になる。以前は2012年4月に予定されていたが、2010年10月、韓国哨戒艦「天安」撃沈事件の影響などで、2015年12月まで延期されていた。なお、北朝鮮はこの事件への関与を否定している。
これについて韓国国防省は、「北朝鮮の核問題などの安全保障状況を重要な条件として考慮して移譲準備をすることを提案し、両国で論議している」と発表した。韓国は作戦統制権の移譲を遂行していくつもりだ、とも付け加えている。
この件に対し、在韓米軍の報道官はコメントを控えており、延期に関する決定は米国国防省が行うとウォール・ストリート・ジャーナル紙に述べている。
【作戦統制権移譲に迷い?】
ワシントン・ポスト紙によると、作戦統制権の移譲延期は、韓国内の迷いを浮き彫りにしたと報じている。
韓国内では、移管が実現すれば、北朝鮮に対抗する強力な抑止力として機能している米韓連合司令部が解体されることになる、と反対論がある。
アナリストは、作戦統制権が韓国に移譲されれば、在韓米軍は実力を発揮できなくなり、北朝鮮を阻止するのは難しくなるであろうと分析している。
また、韓国軍の情報システム、輸送機、水陸両用の船など改善する点があると指摘している。
4月には、韓国は軍備強化のため米軍から攻撃型ヘリコプターなど購入している。戦闘機の購入計画もあるが、価格面から一時保留になっている。
【朝鮮半島の平和は米軍のおかげ?】
在韓米軍は、朝鮮半島の安全保障に最も貢献していると考えられているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は伝えている。
なお米国国防省の佐官の一人が、作戦統制権が韓国に移譲された場合、在韓米軍は韓国の指揮下に入るつもりはないとしていることも報じられている。
在韓米軍の元将校は、駐留米軍の必要性を主張しており、「北朝鮮が完全に核計画を断念するまで、もしくは、それを阻止するため尽力する、必要ならば北朝鮮を打倒する」と述べている。