「中国版LINE」の影響も?中国で相次ぐデモの背景とは
中国南部の広東省江門市で12日、核燃料工場の建設計画に反対する1000人以上がデモを行った。デモ隊は市政府庁舎付近で「核施設反対」などのスローガンを掲げ、警官隊とにらみ合ったが、大きな衝突はなかった。
地元政府は3日、核燃料加工工場の計画を突然発表し、住民らから怒りの声が上がっていた。この施設は同市鶴山に建設が予定され、ウラン濃縮などを行い、広東省などにある原子力発電所に供給する核燃料を生産、2017年の操業を目指していた。
建設予定地の地元政府は、13日朝、「住民から反対意見が多く寄せられたので、それを尊重し、計画の申請を許可しない」と発表し、建設を見送るという異例の決定をした。
海外各紙は、原発推進国の中国で反核デモが起きるのは「異例」だと報じた。
【中国の原子力事情】
原発やウラン濃縮施設に対する中国国民の懸念は、2011年の福島第一原発事故以来高まっている。
福島での事故後、中国政府は原発安全基準を引き上げ、原発産業の開発計画を見直すと発表。ただし、原子力はエネルギー源のひとつに残ると明言した。
世界原子力協会のデータによると、中国には稼働中の原発が17ヶ所あり、建設中が28ヶ所、さらに今後建設が予定されているところもあるとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じた。一部の専門家は「エネルギー不足の中国は原子力発電以外に選択肢は余りない」と指摘しているという。
また、中国南部は炭鉱から遠かったため、比較的原子力に依存しているという現状をフィナンシャル・タイムズ紙は指摘した。
【ソーシャルメディアの活用】
今回のデモ隊はほとんどソーシャルメディアを通じて組織されたという。
政府はデモを阻止するため、中国版ツイッター「シナウェイボー」の投稿を削除した。
しかしデモ参加者らは、検閲がより困難なスマートフォン向けの人気メッセージングアプリ「ウィーチャット」を通じて盛り上がったという。なおウィーチャットは、日本では「中国版LINE」と紹介される(ただし提供はLINEより先)。
フィナンシャル・タイムズ紙は、こうしたソーシャルメディアの普及により、都市部住民が、より環境問題に関して声をあげる機会が増えたと報じている。
中国では大気のほか、水質・土壌の汚染も深刻で、国民の間で公共衛生上の懸念が高まっている。今年になって既に何十件もの化学工場建設などに抗議するデモが起きており、その多くで建設計画中止などに成功しているという。