福島原発、高濃度のセシウム検出をめぐる海外紙の報道
原子力規制委員会は10日、福島第1原子力発電所の観測用井戸から高濃度のセシウムが検出され、汚染水が海洋に流れていた可能性がある事を発表した。規制委は、汚染水の流出は震災後2年以上にわたって続いていたとみている。
東京電力9日、高濃度のセシウム134、137が検出された事を発表した。専門家はこの流出による健康被害を測定するのは難しいとしているが、これらは発がんリスクを高めるといわれている。
規制委の田中委員長は、東京電力の提示するデータや対策へ難色を示しており、汚染水の流出に関しては、「早急に対応し、食い止めるべき問題」としながら、「今日明日にでも解決策を見いだすのが難しい問題」との見解を示しているという。
東京電力は、田中氏の発言に対してコメントはしていない。
【東電の取り組みは限界?】
東京電力はこれまで、隣接する海洋への汚染水流出を食い止めるべく、様々な策を講じてきた。
現在、総容量350,000トンのタンクに汚染水を貯蔵している。ただ、現在貯蔵量は310,000トンに及ぶ。東電も政府関係者も、継続的な対処策ではないとしながらも、長期的な解決策はないとみている。
また、3月に試運転が行われた多核種除去設備(ALPS)の開発がある。これは汚染水から最大750トン/日の放射物質の除去を可能とする。政府と東電によると、この設備は現在のところ順調に稼働し、汚染水からトリチウム以外の放射能物質を検出できないレベルまで除去しているという。なおトリチウムはセシウム等と違い、健康被害がないとされている。
10日の会見で東電は、なぜここ数週間で放射能が多く検出されたのか分析中であると発表した事をニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。
【地元の、そして隣国への影響】
福島第一原子力発電所の事故以来、近海での漁は禁止されている。昨年秋に、ある研究グループが発表した調査結果では、沖で採取した一部の魚からは高レベルの放射能が検出されたという。
一方、日本政府のデータでは、原発近海で採取された魚の汚染レベルは低いとされていると、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
東電は、4月に低量の放射能を含む水を海に流すための「地下水バイパス」の承認を申請しているという。今回発表された事実はその計画に反対する地元の漁師の助けとなるだろう、とロイターは伝えている。
なお中国と韓国は汚染物質の流出に関心を寄せている。ただ10日、中国外務省の報道官は太平洋への汚染物質の流出の報道は知らなかったとコメントした。また韓国当局の職員は、自国で発売されている魚介類から、基準を超える汚染物質は検出されていない、と語った事をロイターは報じている。