カナダ列車脱線事故が、カナダ・米国の原油輸送戦略に与える影響とは?
カナダ東部ケベック州の米国境付近の町ラックメガンティックで、6日未明、原油を輸送していた72両編成の列車が脱線し、爆発炎上した。当局によると、これまでに少なくとも13人が死亡、約40人が行方不明となっているという。今後も爆発の危険があり、死者数は大幅に増える見込みだ。
列車は米レール・ワールドの子会社モントリオール・メーン・アンド・アトランティック鉄道が運行していたもので、米ノースダコタ州からカナダ東部へ原油を輸送していた。
ケベック警察は7日の記者会見で、犯罪の可能性もあるとの見方を示し、刑事捜査を行う方針を明らかにした。
モントリオール・メーンによると、列車は同町の外で停止しており、乗務員が車両を離れた後、脱線したという。脱線は列車の空気ブレーキの解除が原因かもしれないとの見解を発表した。
カナダのハーパー首相は現地視察後、「交戦地帯のようだ」と述べた。
海外各紙は、ここ数年中に北米で起きた鉄道事故で最大規模だと報道している。
【事故の背景】
北米では原油生産がブーム。こうした中、カナダから米メキシコ湾岸まで原油を輸送する「キーストンXLパイプライン」建設の延期により、米加両国で列車での原油輸送が急増している。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、原油会社にとって、列車はパイプラインより輸送コストがかかるため魅力的でないという。
しかし、ここ5年で新しい油田が急速に開発され、パイプラインでの輸送では追いつかなくなり、一時的に列車に移行している状況だという。
一方、テレビ画像によると、今回事故を起こしたタンク車は、以前の脱線事故で米国家運輸安全委員会が「不適切」だと指摘した、古い設計のもののようだとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。
【原油輸送の安全性をめぐる議論】
今回の事故は、大量の原油輸送には列車とパイプラインのどちらが安全で環境によいかという議論を強調したとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。
オバマ米政権は「キーストンXLパイプライン」建設を重視しているが、このプロジェクトは環境への影響も懸念されている。
同紙は、「2つの輸送法の安全性を重視した決定的な研究はない」というアルバータ州の環境団体・ペンビナ研究所所長のコメントを掲載した。同所長によると、列車事故はより頻繁に起きるが、一般的に原油流出の量は少ないという。また、「キーストンXLパイプライン」推進者が、今回の事故を「切り札」として使わないことを望んでいるとコメントしたという。