パキスタン新首相、最初の外遊先は中国 その背景とは?
パキスタンのシャリフ首相は3日、中国を訪問した。6月、14年ぶりに首相に返り咲いたシャリフ氏にとっては、初の公式訪問となる。
6日間の滞在期間中、同首相は、習近平・国家主席や李克強・首相らと会談する。さらに、インフラ計画や投資促進のため、中国国内の企業トップらとも会合する予定だ。
海外各紙は、シャリフ首相と中国双方のねらいについて報じている。
【両国が期待をかける「回廊」プロジェクト】
ブルームバーグによると、同首相が中国を最初の公式訪問先とした理由は、中国からの融資を確保することだという。
シャリフ首相自身は、「回廊」プロジェクトの推進が重要だと述べている。これは、パキスタン南西部のグワダル港と、中国北西部・新疆ウイグル自治区のカシュガルを鉄道・道路で結ぶプロジェクト(全長1300km)で、中国企業が主導することになっている。
ブルームバーグは、この「回廊」ができれば、中国にとっては、中東からの原油輸入と地域への輸出を短縮することができると指摘する。中国は、2014年には原油輸入国のトップになるであろうと予測されており、輸入の50%以上は中東からだ。
また中国は、度々暴動が発生する新疆ウイグル自治区の経済発展策としてアピールする意図もあると、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は指摘している。
ただし中国は、同港付近がテロ攻撃を受ける可能性を懸念しているようだ。同紙によると、2014年に米軍がアフガニスタン(パキスタンの隣国)から撤退することも不安材料のようだ。
一方パキスタンにとっては、このプロジェクトを通して、より中国から支援を受けやすくなる。シャリフ首相は、この回廊ができれば両国間の貿易を活発にし、輸送コストを下げることが可能であると語っている。
また上記のような中国の懸念に対しては、テロ対策でも中国と協力を強める意向だと、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙が報じている。
なおブルームバーグによると、米国とインドは、中国がグワダル港を「軍港」として活用し、インド洋の海事力を強化しようとしているのではないかと懸念を示している。
【パキスタンの課題】
パキスタンの重要課題の一つに、電力不足がある。最大で1日18時間停電することもあるという。
そのためパキスタンは、中国からエネルギーインフラに関する投資を熱望しているようだ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、シャリフ首相は代替エネルギー計画として、5,000エーカーのソーラープロジェクトや5万メガワットの風力発電施設の建設などを挙げている。
これらの計画は2011年にも挙がったものの、パキスタン側が、爆発探知機など1億2,400万ドル規模の中国企業との取引を中止したため、中国は4億5,000万ドルの融資を見送っている経緯があるという。
なお同国は1,000メガワットの原子炉の購入にも意欲を示しており、米国は懸念しているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。