国民やEUから不安の声 クロアチアEU加盟の問題点とは?
7月1日、28番目の加盟国として、クロアチアが欧州連合(EU)に加盟した。クロアチアの加盟は、1990年代に旧ユーゴスラビア紛争で凄惨な争いを経験した地域の国では初となる。
首都ザグレブの広場では記念式典が開かれ、ベートーベンの「歓喜の歌」や打ち上げ花火で加盟が祝われた。
式典に出席したバローゾ欧州委委員長は、EU加盟に向けたクロアチアの行政改革を評価するとともに、他のユーゴ諸国も同様の改革が必要との認識を示した。
海外紙は、クロアチアの加盟に対する国民とEUの不安について報じている。
【EU加盟に対するクロアチアの国民感情】
祝典の華やかなお祝いムードと異なり、国民の反応は冷ややかだと報じられている。
440万人のクロアチア国民は不景気に苦しんでおり、失業率は20%を超えている。若年層の失業率はEUで最も高いという。
こうした背景から、輝かしい栄誉に思われていたEUへの加盟に対する反応も、今では懐疑的なものとなっているようだ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、クロアチア国内の失業者は、他の諸国からの労働力の流入を恐れており、「EUに何を期待していいかわからない」といった声も多いという。
またガーディアン紙では、「オキュパイ(占拠せよ)・クロアチア」という反EUの運動が企てられたことを報じている。主催者らは、EUは富裕な企業・政治家に合わせられた制度に過ぎず、加盟は経済的な自殺に等しいと激しく反発を示しているようだ。
【EUにとって、クロアチア加盟のリスクと価値とは?】
クロアチアの1人あたり年間経済生産高は、EU平均の61%。政府の財政赤字はEU規定を超過しており、公債も増え続けていて、経済状況は決して優等生とはいえない状態だ。
これに関してガーディアン紙は、クロアチアがEUに加盟したら、すぐに経済支援を求める可能性がある、と懸念するエコノミストがいることを報じた。ただしクロアチア外相はこれらの批判を否定している。
実際、クロアチアはEUに加盟はするが、共通通貨であるユーロの導入はしばらく行わない。EUにおける経済支援は、ユーロ圏の国を対象としたものであるため、クロアチア財政への恐怖は過大視されているといえる。
一方、フィナンシャル・タイムズ紙は、バルカン半島の旧ユーゴ諸国の平和と安定のためには、クロアチアの加盟は良いニュースであると論じている。
ただし同紙は、EUへの加盟そのものが、市場経済システムをベースとした民主政治を継続的に発展させていく保証はないとも指摘している(ルーマニアやブルガリアは道半ばだと指摘)。クロアチアでは、これまで以上に、汚職や司法システムの問題に対処する必要があると指摘している。