豪州首相交代は「クーデター返し」?
オーストラリアの与党・労働党のケビン・ラッド党首は27日午前、新首相に就任した。ラッド氏は26日夜の党首選で、ジュリア・ギラード前首相を破り、党首に就任していた。
ギラード氏は2010年、ラッド氏に替わって初の女性首相となった。しかし就任以来支持率は低下し続け、労働党内部から、9月14日に実施される予定の総選挙で勝てないと不安の声が上がっていたようだ。党首選の敗北を受け、ギラード氏は首相を辞任し、政界を引退することを表明した。
ラッド氏は今後政策を実行するため、緑の党や無所属議員の支持を取り付ける必要がある。
海外各紙は、今回の首相交代の背景を報じている。
【ギラード氏の失策】
ギラード政権は、稀に見る好景気に沸いた鉱業からの歳入によって、財政が安定し、信頼を手堅いものにしていた。しかし2011年、公約に反して炭素税の導入を行ったことが批判され、徐々に有権者の支持を失っていったという。その後、鉱業景気が下火になるにつれ経済成長も失速した。
また同氏は、野党自由党党首のトニー・アボット氏を「女嫌い」と呼ぶなど、個人的側面も大きな話題となった。
結局ギラード氏は在任中、首相として安定した足場を得ることはなかったという。それは、ひとつには権力を握るに至った手法によるだろうとニューヨーク・タイムズ紙が報じている。
2010年の党首交代前、当時の首相であったラッド氏は、有力な鉱業に重い課税を提案し、企業の怒りを買った。鉱業の圧力団体は猛烈なキャンペーンを展開し、課税は大規模な労働者解雇につながるのでは、という不安を有権者に植え付けた。これでは選挙で勝てないという見方が労働党内部に起こり、ギラード氏に急速に支持が集まった。そして突然の党首交代に至ったという。ギラード氏は就任後、税の軽減を実施、鉱業界との素早い関係改善を図った。
ギラード氏は辞任にあたり、実績として、難しい国会運営の中、教育と社会保障の分野で改革を成し遂げたことを強調した。また、首相貿易相手国である中国とインドとの関係を大きく前進させたとも述べた、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。
【返り咲いたラッド氏】
ラッド氏は、2007年~2010年首相を務めた。党首を追われた後は、ギラード氏のもとで2年間外務大臣として政権に参加していた。
同氏が首相でも、9月の選挙で勝てるという見方をするものは少ないようだ。しかし、彼が返り咲いたことで、労働党が選挙で受けると予想されるダメージをいくらか防ぐことができるのでは、とフィナンシャル・タイムズ紙はみている。
ラッド氏は、経済面の方針として、国の予算の大幅な削減と迅速で確実な政策実行をあげたという。
同紙によると、ラッド氏の堅実な政治姿勢は、大多数の有権者が評価しているそうだ。
また新首相にとって、失業率が5.5%と他の先進国よりも低いことや、低金利が消費を後押しし経済を支えているなど、いくつかの好都合な状況もあるとウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘している。
それでもなお、最近の選挙予想では、アボット氏が率いる野党自由党が議席の大多数を勝ち取るとみられているようだ。