市場は過剰反応? 「任期半年」バーナンキ発言のポイントとは?

 米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は19日、米国経済の回復に伴って、現在月間850億ドルの債券購入プログラムを今年後半から段階的に縮小、失業率が7%を割った時点(2014年半ばと予測されている)で、完全に終了させる意向を示した。

【市場の不安】
 市場は、FRBが「回復」を過大評価しているだけであって、刺激はまだ必要だと考えているため、落胆を示した。株価は下がりドルは上昇、10年債利回りは2012年3月以来の高水準を記録した。
 FRBは2014年に3.0%から3.5%の成長を予測しているが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の調査によると、民間の予測は2.8%である。
 FRBは特に住宅市場の活性化を重視しているが、5月にバーナンキ議長が債券購入縮小を示唆して以来、住宅ローン金利は上昇し始め、借り換えは衰え始めている。ニューヨーク・タイムズ紙は、住宅が景気回復に果たす役割に重点を置いている人の発言として「非常に奇妙」という、専門家の批判を伝えている。

【FRB内部の反対】
 FRBの政策理事会である連邦公開市場委員会では、12人中2人が方針に反対していたが、理由は対照的である。
 カンザスシティ連銀のエスター・ジョージ総裁は、FRBの緩和は既にやり過ぎであり、不安定を招くと主張した。
 一方セントルイス連銀のジェームズ・ブラード総裁は逆に、インフレ率が目標に反して50年以上ぶりの低レベルとなっていることから、むしろ緩和は手ぬるいと主張した。デフレになれば消費者には値下がりを待つ習慣が生じ、経済は麻痺するという姿勢だ。

【最後まで責任を取るのか?】
 ただしFRBは、短期金利の引き上げなど他の縮小措置は、まだずっと先になるとしている。具体的には、短期金利引き上げは、失業率が高くとも6.5%を割ってからになるという。
 また、バーナンキ議長はこの路線が既定のものではなく、状況に応じて遅らせたり逆行させる可能性もあると強調した。「投資家を安心させる意図」との見方もできる。ただしウォール・ストリート・ジャーナル紙は、FRBには過去にも2度、同様に刺激策を早く引き揚げ過ぎた結果、結局刺激再開を余儀なくされた「前科」があると指摘する。なお各紙は、バーナンキ議長の任期が来年1月で終了し、延長されない見込みであることも指摘している。

Text by NewSphere 編集部