タリバンが、ついに和平交渉を申し出た理由とは?
18日、イスラム過激派運動・タリバンは、カタールの首都ドーハに事務所を開設し、テープカットを行った。同時にタリバンは、アフガニスタンにおける和平交渉について、アフガニスタン政府ならびに米国との会談を申し出た。従来タリバンは、米国やアフガニスタンの「傀儡」政権とは対話しないと表明していた。
海外紙は、タリバンの姿勢の変化の理由について分析している。
【会談は実行される見込み】
アフガニスタンでは18日、国連平和維持部隊からの治安任務引き継ぎ式典が、首都カブールで行われていた。
タリバンの申し出に対し、アフガニスタンのカルザイ大統領と米国のオバマ大統領はともに会談に応じる姿勢を見せた。米国とは20日、アフガニスタン高等平和評議会とも「その直後」「今週中に」、カタールで会談が行われる見込と報じられている。
なおアフガニスタン政府との会談こそが和平の中核であり、20日の米国との会談はひとまず捕虜交換がテーマになるだろうと報じられている。
【武器は置かない】
国際部隊は2014年末までに撤退予定であり、アフガニスタンの治安が安定に向かっているため、和平の潮時になったためと見ることもできる。とはいえ各紙は、タリバンの申し出が、即座に暴力停止につながるわけではないと伝えている。実際カブールでは、18日、平和評議会メンバーを狙ったとみられる複数の爆弾テロ事件が発生し、国連兵などに死傷者が出た。
タリバン側は、アフガニスタン国外に関心がないことを強調、「何人にも、アフガニスタンの土の上から他の国の安全を脅かさせないであろう」と述べ、国際テロ組織アルカイダとの決別も示唆している。ただし、交渉中も「武器は置かない」と声明している。
オバマ米大統領は、「和解に向けた重要な第一歩」ではあるが「全くの初期段階」にすぎず、「その道はデコボコだらけだろうと予想しています」と述べた。
【亡命者がなぜ事務所を?】
各紙はドーハ事務所開設の意図も疑っている。タリバンは「アフガンの占領終結を保証できる政治的・平和的解決をサポートし、独立したイスラム政府と真の治安をもたらすため」と述べているが、カルザイ大統領がサウジアラビアやトルコを会談場所として提案したところ拒否したという。カルザイ大統領は、最終的にはアフガニスタン国内で会談が行われるべきと考えている。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、カタールがイスラム主義運動のパトロンを自任していることを指摘した。
またニューヨーク・タイムズ紙は、タリバンがアフガニスタンの正当な政治勢力として国際社会に認められることを狙っており、そのための既成事実としての事務所開設ではないか、という専門家の見方を伝えた。交渉自体にタリバンがどこまで本気であるかは不透明であるという。
さらに同紙は、ムハンマド・オマール師らドーハ事務所の代表団が、亡命中のはずのタリバン指導部から本当に権限を認められているのかどうかについても疑いを挟んでいる。なおカタール政府は、正当な仲介者が存在することを保証しているという。