20万人が「W杯反対」デモ ブラジル国民の怒りとは?

 ブラジル・サンパウロで今月初めに起きた公共交通料金の値上げに対する小規模な抗議運動が各地に波及。1985年に軍政が終わって以来、同国最大の反政府デモに拡大した。
 デモ隊は、開催中のサッカー・コンフェデレーションズカップや、2014年のワールドカップ準備に公費を無駄遣いしているなどと抗議している。
 元左派活動家のルセフ大統領は18日、「17日の大規模デモは我々の民主主義のエネルギーを証明した」と述べ、抗議者に理解を示して沈静化を図っている。
 海外各紙は、不意に起こった同国の反政府デモを、「中産階級の目覚め」ととらえ、背景にある複数の要因を探った。

【劣悪な公共サービスの改善】
 ブラジル政府は2014年のワールドカップに向け、新たなスタジアムを各地に建設し、国際的なイメージアップを図ろうとしている。デモ隊は、この公費を教育や医療などに回すよう求めている。
 現地の新聞によると、同国の開発銀行は、ワールドカップのための新スタジアムに、2億ドルの新規融資を承諾したという。しかし一部のスタジアムについては、建設の遅れやコスト超過が起きていると批判されている。
 ブラジルのレベロ・スポーツ相は、フィナンシャル・タイムズ紙に、「これらのイベント実現を妨げるいかなる取り組みも容認しない。抗議は認めるが、限度がある」と語ったという。

【不十分な政治家の説明責任】
 さらに、政府の腐敗に対する不満の声も上がっている。例えば今年初めに大規模な票買収事件で有罪判決を受けた政治家らは、だれ一人刑務所に入っていないという。
 その他にも経済の減速、失業率上昇、金利上昇により、2014年の大統領選で再選を目指すルセフ大統領の支持率は下がり始めているとフィナンシャル・タイムズ紙は指摘した。
 同紙は「現政府を支持する新中産階級が徐々に苛立ち、現在の経済的利益を維持できるか心配している」、「もし失業率が上がり始め、インフレで消費水準が落ちれば、この主要支持層からの支持は弱まるだろう」というアナリストの見解を掲載した。

【トルコ首相と対照的】
 また、ルセフ大統領の対応は、同様の大規模デモに直面しているトルコのエルドアン首相と対照的だと海外各紙は報じている。
 ニューヨーク・タイムズ紙は、エルドアン首相は抗議者をテロリストとみなしたが、ルセフ大統領は政府の願望と国民の現実のギャップに気づいたようだと報じた。
 一方ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ブラジルのデモ隊はルセフ大統領を個人的に標的としておらず土地を占拠してもいないと、両国の状況の違いを指摘している。

Text by NewSphere 編集部