トルコデモ収束に向け、政府が「投票」提案 そのねらいとは?

 トルコでは反政府デモが2週間以上続いている。11日には、警察がイスタンブールのタクシム広場でデモ隊を排除したものの、広場には12日から13日にかけて、多数のデモ参加者が集まっているという。
 なおデモはトルコ市場に悪影響を与えており、トルコ中央銀行総裁は、5月初め以降、トルコ市場から約80億ドルの資金が流出したことを明らかにした。総裁は「その3分の1は国内不安によるもので、残りは世界的な要因によるものだ」と述べた。
 海外各紙は、デモの現状とエルドアン首相の対策について報じた。

【エルドアン首相、融和か、強硬姿勢か?】
 エルドアン首相は12日、首都アンカラでデモ隊の参加者11人と約5時間にわたり会談した。しかし、会談の相手は政府が選抜しており、本来の抗議運動とは全く関係ないとの批判の声もある。
 また、与党・公正発展党(AKP)の幹部は12日、デモの発端となったイスタンブールのゲジ公園再開発の是非を問う「住民投票」を実施する意向を示した。
 ギュル大統領も同日、「政府は平和的な抗議者に耳を傾ける準備はあるが、暴力的なデモを容認しない」と述べ、「民主的成熟で乗り切りたい」との意向を示した。
 ただし、国民投票に対しては、多くのデモ参加者の他、専門家らも懐疑的だという。「都市空間計画の決定をするのに、投票は健全で民主的な解決策ではない」というイスタンブールの大学助教授のコメントをニューヨーク・タイムズ紙は掲載した。

 一方エルドアン首相は、別の会合で、「内相に12日、24時間以内にすべての反政府デモを収束するよう命じた」とも述べている。

 こうした政府の動きは、「デモ参加者たちを一握りの過激派とみせ、その大義に対する国民の支持を切り崩そうとする政治的な戦略の一環だ」とするアナリストの見解をウォール・ストリート・ジャーナル紙は掲載。同紙は、こうした戦略がトルコ社会の分裂を広げるおそれを懸念した。

【外圧への強硬姿勢】
 イスタンブール警察当局は12日、デモの取材をしていたカナダ放送協会(CBC)の外国人記者2人を拘束した。
 政府当局者は、外国のメディアが今回の騒動を誤って報道しており、トルコの進歩を阻止するため共謀して緊張をあおろうとしていると非難している。
 トルコのEU交渉チーフは、デモ当初に欧米メディアが「トルコの春が始まった」と報じたことを指摘し、「トルコで起こっていることとアラブの春を比較することは根拠がない」と強く批判。「トルコは民主主義である。民主的に選ばれた政府を汚す組織的運動がある」と述べたという。

Text by NewSphere 編集部