パキスタンでシャリフ氏が首相就任 取り組まなければならない課題とは?

 パキスタンのナワズ・シャリフ氏が5日、首相に就任した。同国で前例のない3度目の首相就任となる。なお民主的な手続きで首相の引継ぎが行われたのは初めてである。
 シャリフ氏は1999年、2期目の首相在任中、軍部のクーデターにより失脚し海外に亡命。2007年に帰国していた。
 同氏は就任式で、電力不足の問題に取り組むことを誓い、領土内での米国無人機による攻撃を停止させることを緊急課題としたという。
 海外各紙は、新首相が直面する多くの難題を分析している。

【米国無人機による攻撃】
 シャリフ首相は、「連続して日常的に行われる無人機による攻撃は中止するべきだ」と発言。パキスタン領土内で行われる米国無人機による攻撃は主権を侵害している、とみる世論に同調したものだ。
 パキスタンのペシャワール高等裁判所は9日、政府は無人機の使用を米国にやめさせるか、でなければ外交関係の断絶や無人機撃墜を検討すべきという判決を下してもいる。
 オバマ米大統領は新方針を打ち出し、攻撃の頻度を減らすようだが、5月にはタリバン運動の幹部を殺害したことが報じられた。専門家からは、シャリフ首相は米国を非難するだけでなく、今後はより現実的な対応をとらなければ、という声もあがっている。
 さらにニューヨーク・タイムズ紙は、より大きな問題は、2014年に米軍がアフガニスタンから撤退した後、治安や外交などをどう舵取りするかだという専門家の指摘を取り上げている。

【軍との関係】
 大きな力を持つ軍との関係構築も難題のひとつのようだ。
 1999年に軍部を率いてクーデターを起し政権を奪ったパルヴェーズ・ムシャラフ氏は現在、イスラマバードの自宅で監禁されている。シャリフ首相は、彼の扱いを決定しなければならないが、これについて軍部は神経質に注視していると、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
 専門家は、クーデターが再び起こることはないだろうとみているが、軍は今後も安全保障と外交の支配権を握ろうとするだろうと推測している。

【経済問題】
 ニューヨーク・タイムズ紙によると、米国に対しては強い姿勢を示したシャリフ首相だが、中国とは経済面での協働を拡張すると表明するなど非常に好意的なようだ。
 またシャリフ首相はこの他、国営企業の改革にすぐ手をつけると約束した、とフィナンシャル・タイムズ紙が報じている。これらの企業は、年間GDPの少なくとも2.5%の損失を出しているという。
 加えて、同国の外貨保有量は現在、輸入費2ヶ月分よりも少なく、サウジアラビアから50億ドル、国際通貨基金(IMF)から90億ドルの資金援助を頼まなければならないだろうと報じている。

Text by NewSphere 編集部