欧州で大規模洪水 海外紙は独選挙への影響を分析
ドイツやチェコ、オーストリアなど欧州中部の一帯が、数週間にわたる激しい雨の影響で、未曾有の洪水に襲われている。特に被害が大きいのは、ドナウ川とエルベ川の周辺地域だ。この地域は、2002年にも洪水により甚大な被害を受けていた。
今回の洪水により、4日までに少なくとも12人が死亡し、数名の行方不明者もいると報道されている。避難者は数万人に及び、全地域で、人の移動や貨物輸送が困難になっている。
ドイツのメルケル首相は4日、被害の大きい同国バイエルン州パッサウを訪問し、洪水被害への緊急支援として1億ユーロ(約130億円)の拠出を表明した。
海外各紙は、各国の被害と、特に選挙が近づいているドイツの対応の様子を報じている。
【未曾有の洪水】
ドナウ川の最高水位は3日、42フィート(約13メートル)という記録的数字に達した。専門家は過去500年間で最高だろうと推測した、とニューヨーク・タイムズ紙が伝えている。各国の状況は下記のように報道されている。
ドイツでは、連邦軍4000人が、地域の防災組織を支援するため被災地に派遣された。東部のドレスデンでは、ツヴィンガー宮殿の美術品破損を含め80億ユーロの被害を被った、とフィナンシャル・タイムズ紙が報じている。
オーストリアでは、2400世帯以上が避難したとウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。現地の下水道施設が操業を一時停止した他、地下鉄の一部路線が運行停止になった。
チェコでは、2日以降1万人が避難し、いくつかの地域で停電が起きた。
ハンガリーでは、ヴィクトル首相が、同国北西部のスロバキア国境沿いの住民に避難の準備を呼びかけた。
【メルケル首相の迅速な対応】
海外各紙は、被災地を視察し緊急支援を直ちに表明するなど災害対応に迅速に動いたメルケル首相の様子を報じ、これは9月の総選挙を強く意識したのだと指摘している。
同国は2002年にも洪水により大きな被害を被った。当時のシュレーダー首相は選挙を控え人気がなかったが、災害対応が評価され支持を取り戻したという。彼の率いるドイツ社会民主党(SPD)もこれにより、保守派を大きくリードし選挙で勝利した。
この経緯を踏まえ、メルケル首相や他の候補者が選挙前の災害に対し失策をしないように必死だ、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。
オーストリアも同様に9月に選挙が控えている。同国のファイマン首相は被災地を訪れ、「金額がどれだけ必要になろうとも、なによりもまず洪水被害対策予算を捻出し必要な財源を見つける」と支援を約束した。