未承認のアメリカ遺伝子組み換え小麦が発覚 揺れる各国
日本・韓国は、オレゴン州産小麦輸入の当面停止を決定した。米農務省が先週、同州の農場で未承認の遺伝子組み換え小麦が見つかったと発表したことを受けての措置だ。
EU(欧州連合)は、米政府に詳しい情報提供を求めるとともに、加盟国に対して、米国から輸入される小麦について速やかに検査を実施するよう勧告した。
米当局は「この小麦が流通した証拠はなく、健康リスクをもたらすことはない」としている。
海外各紙は、最大小麦輸出国の発表による、世界の小麦市場への影響を案じた。
【問題の小麦】
この小麦は、米バイオ大手のモンサント社が試験栽培したものの、実用化の承認が得られなかった、除草剤に強い品種だという。同社は2004年に開発を中止しており、この小麦がどのように畑で生育していたのか不明だと、ニューヨーク・タイムズ紙などは指摘した。
モンサント社は、「遺伝子組み換え小麦はない。もし確認されても、食品、飼料、環境安全の懸念はない」としている。
【日本の対応】
今回いち早く対応したのは、米小麦最大の輸出国である日本だった。
農林水産省当局者は、米小麦のかわりに「日本の買い手はフランス、オーストラリア、カナダの小麦を購入した」と述べた。
ただ、輸入が停止されたのは、麺やクラッカーに用いられる「ソフト・ホワイト小麦」という品種に限られる。米国ではあまり栽培されていない品種で、「日本はほかの品種の小麦は購入し続けている」という米小麦産業の楽観的なコメントを、フィナンシャル・タイムズ紙は掲載した。
【EUでの余波】
EUは、未承認の遺伝子組み換え作物(GMO)を認めない政策「ゼロ・トレランス」を実施している。
一方、米国の農業圧力団体は、米国産のGMOやホルモン牛肉などを禁止するEUに対し、「消費者安全の主張は、保護貿易主義の口実だ」と非難していた。
今回のニュースは、EUと米国の貿易協定をめぐる交渉の大きな障害となるだろう、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じた。