米無人機、タリバン運動の幹部を殺害か? パキスタンで懸念広がる

 パキスタンの治安当局者は29日、米国無人機の攻撃により、イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」ナンバー2、ワリウル・ラフマン氏が死亡したと明らかにした。同国北西部の部族地域である、北ワジリスタン地区で行われた攻撃によるものとのことだ。
 ただし、この報道の真偽に関して、米国側もタリバン側も正式なコメントを控えている。
 無人機による攻撃は、5月11日のパキスタン総選挙以降初めて報道されたものだ。これに対し、パキスタンの次期首相ナワーズ・シャリフ氏は、領土内での無人機攻撃を改めて批判した。
 この報道が真実なら、タリバン、パキスタン政府、米国の関係はどう変わるのか、海外各紙は分析している。

【タリバンと米国】
 無人機攻撃については、オバマ大統領が先週、使用目的の透明化と使用制限を発表していた。その直後に報道された今回の件は、「米国民に対する、継続的で差し迫った脅威」を排除する、という姿勢を示すためではないかとニューヨーク・タイムズ紙が報じている。
 ラフマン氏は、2009年のアフガニスタンでの米中央情報局(CIA)の拠点襲撃、2010年の米国タイムズスクエアでの車爆発事件に関与していたとみられている。
 また米国は2010年、TTPを、アルカイダに戦闘員を供給するテロ組織と指定し、指揮官のラフマン氏に500万ドルの懸賞金をかけていた。

【タリバンとパキスタン】
 パキスタン外務省は、米国の無人機使用に対し、パキスタンの主権を侵害する間違った手段だと非難した。
 しかしフィナンシャル・タイムズ紙は、実際は、今回の結果はパキスタンの指導部から歓迎されることになるだろうと報じている。タリバンや他のイスラム過激派により繰り返される一般市民や軍への攻撃が、国の安定を脅かし始めているからだという。

 一方、専門家や保守派は、ラフマン氏を失ったことは、パキスタン政府とタリバンとの平和交渉を妨げることになったのではと危惧しているようだ。
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、彼が比較的温和な性格で、和平交渉にふさわしい相手だった、という専門家のコメントを取り上げている。
 タリバンと関係の深いカイバル・パクトゥンクワ州に多くの議席を持ち、無人機使用に強く反対する有力野党パキスタン正義運動(PTI)は、「今回の無人機による攻撃は、明らかに平和交渉を妨害しようとの行為だ。」と非難している。

Text by NewSphere 編集部