EU・中国、貿易摩擦 各国の思惑とは?
欧州委員会は27日、ヨーロッパで販売される中国産ソーラーパネルに対し、来月5日から反ダンピング(不当廉売)関税を課すことを決めた。これは6ヶ月間の暫定的な課税で、税率は最高で67.9%、平均で47.6%となる。ダンピングの有無についての調査結果が12月に出た後、本格的な課税を実施するかが決定される。実際に発動されれば、期間は最長5年となる。
ただし欧州委は、課税についてまだ交渉の余地があるとし、中国側の改善措置を求める姿勢のようだ。なお、ドイツは反ダンピング関税に反対している。
海外各紙は、各国の思惑について詳しく分析している。
【欧州委員会の決定】
欧州委員会のジョン・クランシー報道官は、「(課税の目的は)、公正な貿易が行われ、ヨーロッパの労働者と企業に正しいことをすることだ。」と述べている。
暫定課税に関しては、欧州議会の議員は参考意見を出す権利しかないが、欧州委員会のカレル・デフフト通商担当委員は、中国がこの件について多くの議会議員に圧力をかけていると、非難したという。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、委員会は、「明らかな証拠が認められた場合、いかなる違法なダンピング行為をも阻止する」という。
そして、今後の和解の一段階として、「価格合意」を取り決めるため、公平な交渉の場を設けるべきだと、中国に要求したという。
【ドイツの微妙な立場】
ドイツは、中国にとってヨーロッパで最大の貿易相手国であり、中国は、ドイツにとってアジアで最も関係が深い国だ。
半世紀にわたり、ドイツはヨーロッパ統合を最も熱心に支持したが、今回は、ヨーロッパ全体よりも自国の利益を優先したと、ニューヨーク・タイムズ紙は指摘した。理由は、ドイツの大企業の多くが中国への輸出で収益の多くを得ているからだという。
先週末、ドイツのアンゲラ・メルケル首相と中国の季克強首相は、中国市場でのドイツ企業の経営拡大と中国からドイツ国内へのさらなる投資をすすめるとする、12項目以上の貿易協定を結んでいる。
メルケル首相は、ダンピング関税に関して、「ドイツは、中国との貿易摩擦解決のため、可能な限りの手段を講じる。」述べたという。
【中国の悩み】
中国商務部は27日、課税が実施されれば、「中国は、黙ってはいない。自国の利益を守るため必要な手段を講じるだろう。」と対立する姿勢を示したと、ニューヨーク・タイムズ紙が報じている。
米国は、EUと同様の問題を抱えているが、既にソーラーパネルに約30%の課税を仮決定した。
米国もEUも、中国企業に中国国内でのソーラーパネル過剰生産の問題に取り組むように要請することになるだろうが、中国側はその対処法を見つけられずにいるという。
中国国内では既に、過剰生産のため太陽光発電大手企業が倒産に追い込まれるなどしている。