米国、無人機による自国民の殺害認める

 オバマ大統領が2期目における対テロ方針について演説することに先駆けて、米政府がこれまでに国際テロ組織の幹部らを狙った作戦の中で、無人攻撃機によって米国民4人を殺害したことを明らかにした。
 自国民の殺害はこれまでも問題にあがっていたが、機密情報扱いであり、政府が公式に事実を認めたのは初めてだ。
今後も対テロ作戦において無人攻撃機の使用を続行するために情報公開をし、政策の透明性を高めることで国民の理解を得たい考えのようだ。
 海外各紙は発表された4人の殺害内容やオバマ政権の方針をまとめている。

【政府は正当化、しかし曖昧な運用基準に非難も】
 ホルダー米司法長官が、連邦議会幹部に宛てた書簡の中で明らかにした。
 2009年以降の対テロ作戦の中で、イスラム教導師アンワル・アウラキ師を2011年9月にイエメンで殺害した後に、立て続けにその息子アブドルラーマン・アウラキ容疑者、サミル・カーン容疑者、ジュード・ケナン・モハメド容疑者を殺害したと各紙は報じている。
 イスラム過激派組織の幹部であったアウラキ師のみが対テロ作戦の対象であったが、その他の3人は直接の攻撃対象ではなかったという。書簡の中では、アウラキ師殺害の正当性を訴えるべく、同氏の危険性を説明しながら、米市民権を所有しているだけでは安全性を確証できないと綴っていたとUSAトゥデイは報じた。
 一方、殺害された「容疑者」らの中には、実際に犯罪容疑者として訴追されたことがなかった人物もいるため、自国民の暗殺の合法性をめぐる議論が展開されていた。人権団体からは、オバマ政権が都合の良い偏った定義で「世界中にある戦地」であらゆる人物を殺害しようとしていると非難の声があがっているようだ。

 無人攻撃機の不当な使用が問題視される中、オバマ政権はその権限を中央情報局(CIA)から国防総省に移管する方針だとニューヨーク・タイムズ紙は取り上げている。これにより、無人攻撃機を用いる作戦に対して、連邦議会がより厳しく監視できるようになるという。
 今後は、無人攻撃機の使用を「継続的に差し迫る米国民に対する危険人物であり、容易に捕獲できない」場合のみに限定し、確証はないが危険性が予測される程度では、攻撃対象とすることができなくなると同紙は報じた。
 また、権限の移管によって、CIAを情報活動を行う組織へと戻す狙いがあるという。9.11以来、準軍事的な役割を担ってきたが、本来の機能を取り戻し、国防総省とCIAの役割分担を見直す時期がきたとの考えが強いようだ。

【伸びる無人攻撃機市場】
 米政府が無人攻撃機の使用制度を整えようとしていることからも、テロ撲滅を掲げる戦いは今後10~20年は続く見込みだとニューヨーク・タイムズ紙は指摘している。
 実際に、無人攻撃機の世界市場は拡大しており、既に4000機種が販売されているようだ。購入台数は米国が半数近くを占めている他、中国でも米国を上回る投資がされていると報じられている。
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の分析によると、戦闘状況では有人機の方が高い能力を持っており、その差を縮めるには数年かかるというものの、飛行距離や長期間空中にとどまることができることなどから、偵察の面では優れているという。
 無人攻撃機需要はこの5年間で毎年2桁台の増加率を示しており、米国のみならず、世界中でその需要が拡大していくことが予測されている。

Text by NewSphere 編集部