アップル、アマゾン…巨大企業の「税逃れ」手法とその対策とは?
米アップル社が少なくとも過去4年間、どこの国にもほとんど法人税を支払っていない、と米上院が指摘するなど、各国において、巨大多国籍企業による「税逃れ」が問題になっている。
22日のEUサミットでもこの議題が目玉となり、各国は悪質な税対策と「闘う」ことで一致したが、具体的な方策について足並みは揃っていない。
【どういう手口?】
フィナンシャル・タイムズ社は、Q&A形式で問題の要点を解説した。
舞台は、多国籍企業を誘致するため、1950年代後半から低い法人税率を採用しているアイルランドなどの「タックスヘイブン(税避難所)」だ。多国籍企業は、「アイルランド法人だが税務居住者でない」子会社を設立して、各国で上がった利益をそこで計上する。また法人認定のため、子会社には現地の従業員を雇用する。かつては利益移転のためにオランダを経由するなどしていたが、現在の法律ではこれは必要なく、直接アイルランドに利益を移転できる。
さらにインターネット企業などは、知的所有権からの利益が多いため、知的所有権自体を、ケイマン諸島など税がかからない国の別の子会社に移し、アイルランドの子会社には、そこに使用料を支払わせる形にしている。
アップル社にはアイルランドと特約があり、通常12.5%の法人税を2%足らずで済ませているとされているが、アイルランド政府産業開発庁のオリアリー長官は否定している。
またブルートン企業大臣は、同国の税制について、「この経済状態の中で雇用を促進する」ための正当なシステムであり、「50年近く、外国からの投資にオープンであるべく、そのニーズに敏感である税法を持つべく、保持してきたもの」であると主張した。
【法改正に及び腰の理由は?】
ニューヨーク・タイムズ紙は、ルクセンブルクなど、他のタックスヘイブンや、銀行機密に基づく「隠し口座」国について伝えた。
ルクセンブルクには、銀行などがやはり子会社を展開し、54万人の人口に対して3500億ドルの預金がある(正規の国民1人あたり65万ドルの預金)。しかし現地の弁護士は、口座の監査強化などを行えば、預金者が他の国に逃げてしまう懸念があるという。このためルクセンブルクは、スイスなどのライバルと足並みを揃えてでなければ、改革に踏み切れないだろうと指摘する。
【ではどうする?】
特にEU各国では、不況と緊縮財政を背景に、企業の「税逃れ」への風当たりが強まっている。EUは、「年間ゆうに1兆ドル以上の税収を失っている」と考えているようで、どうにか対策を欲している。
しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、各国とも外国からの投資を逃がしたくないため、統一的な具体策は見えていないという。
英仏独は、経済協力開発機構(OECD)に対策の立案を求めており、OECDは夏までに回答を約束している。ただしキャメロン英首相はサミット前に、「私はビジネスへの低課税を信じます。我々は投資を奨励し、雇用を奨励しようとしており、私はイギリスに世界的レースで勝者になってほしいからです」と発言した。
フランスは、応急的に、ユーザークリック数などに応じて課金するという、企業向け「インターネット税」を検討しているが、実際に導入されるのかは定かでないようだ。