イラン大統領選挙 有力候補2人認められず その理由とは?
イラン護憲評議会は21日、アハマディジャネド現大統領側近のモシャイ氏(52)と、保守穏健派の改革派に近いラフサンジャニ元大統領(78)に対し、6月の大統領選への出馬を認めないと決めた。
両氏は、同じく大統領選への立候補を表明していた、核交渉責任者のジャリリ氏(47)とともに、有力候補と言われていた。
ただし、最高指導者ハメネイ師が最終決定権を持つため、出馬を認められる可能性は残っている。
海外各紙は、有権者の支持が高いとみられた両候補の、出馬資格剥奪の背景について報じている。
【支配力拡大を狙う宗教勢力】
護憲評議会は、ハメネイ師が任命する聖職者らで構成される。評議会は、ジャリリ氏の他、ハメネイ師に近い候補者を中心に、8名を大統領選候補者として認めた。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「ラフサンジャニ氏とムシャイ氏はどちらも、ハメネイ師が好まない政治派閥の代表で、彼らを認めないことは、つまり、これらの派閥をイラン政界から排除しようとするもの」という専門家のコメントを取り上げた。
フィナンシャル・タイムズ紙によると、ハメネイ師側の強硬派は、「大統領の職務とその重責は、高齢のラフサンジャニ氏には無理だ」と話したという。また、「緑の運動」による抗議行動を煽るなどした裏切り行為があり、選挙戦に出る法的な資格はないとも非難したという。なお「緑の運動」とは、2009年、アハマディネジャド大統領の再選が不正だと訴えた市民運動のことだ。
ムシャイ氏は、護憲評議会の決定は「大きな過ち」だと訴え、ハメネイ氏と話し合うつもりだという。しかし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、ハメネイ師側は、今やアフマディネジャド現大統領の政策を支持しておらず、彼が推すムシャイ氏に対するこの結果は予想されたことだという。
【求心力の弱まる政治】
前述の「緑の運動」は弾圧され、多くの有権者が政治への関心を失ってしまったと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は伝えている。
今回のラフサンジャニ氏の出馬表明は、多くの改革派と「緑の運動」の支持者が最も好ましい選択とし、世論も盛り上がっていたようだ。このため、資格剥奪のニュースに多くの人々が衝撃を受けたという。同紙は、このまま彼が選挙戦に出なければ、支持者たちは選挙を棄権するだろうと推測している。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、彼らは、ラフサンジャニ氏が主導権を握っていた時代に育った35歳以下の有権者で、人口の約70%を占めるという。
もし今回の大統領選でも、多くの有権者が棄権するような事態になれば、政府の正当性をさらに弱めることになるだろうと、各紙は指摘している。