EU、中国メーカーに「最終警告」を発したわけ

ZTE

 欧州委員会は15日、中国の通信機器メーカーに対し、補助金支援と反ダンピング(不当廉売)の疑いで調査する用意があると警告した。
 調査は華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)とZTE(中興通訊)の2社に焦点を当て、電話機やモデムなどの一般向け通信端末ではなく、通信ネットワーク機器が対象だという。これら対象製品の輸入額は、年間で約10億ユーロに上る。
 欧州委のクランシー報道官は「中国と交渉での解決を可能にするため、調査はすぐには発動されない」と述べた。ただ「時間は押し迫っている」と加えた。
 同報道官は、欧州委自らの判断で調査するという可能性が特に重要と指摘。「欧州企業への報復リスクが高い状況で企業を守る効果がある」と説明した。
 華為技術は「欧州委から正式な通知を受け取っていない」と述べたが、「ダンピング行為をしていないし、違法な補助金は得ていない」と反論した。
 ZTEはコメントを控えたが、以前ダンピングと違法な補助金の疑いを否定していた。
 海外各紙は、欧州委による初めての「職権調査」として注目した。

【これまでの経緯】
 欧州委と中国は過去1年間、欧州での中国製通信ネットワーク機器について協議を続けてきたが、合意には至っていない。今回の決定は中国政府を急かす意図があるとフィナンシャル・タイムズ紙は報じた。
 しかしスウェーデンなど一部の加盟国は先月、欧州委に撤回するよう求めていた。
 欧州委はこれまで中国製太陽光パネルや陶磁器などについても調査し、反ダンピング関税を課す見通しとなっている。

【欧州メーカーの反応】
 欧州企業の申し立てなしに欧州委が「職権調査」するのは極めて異例だ。今回の警告は欧州の通信機器メーカーを脅かすとブルームバーグは報じた。
 エリクソンなど欧州の主要な通信機器メーカーにとって中国での事業拡大を狙っている微妙な時期で、調査が決定すれば報復を受けるのではないかと懸念している。
 「圧力戦術は中国政権の反感を買い、逆効果ではないか」という一部アナリストの見解をフィナンシャル・タイムズ紙は掲載した。
 一方、「中国企業がいつも最安のネットワーク機器を販売しているわけではない」「華為技術は一部の高性能な携帯ネットワーク基地局に高い価格を設定している」という欧州のモバイル事業者幹部のコメントをウォール・ストリート・ジャーナル紙は掲載した。

Text by NewSphere 編集部