米大手ヘッジファンド、ソニー分社化を提案 そのねらいは?

 米ヘッジファンド、サードポイントのダニエル・ローブCEOが、ソニーエンタテインメントの一部分社化などを提言した。サードポイントはソニー株の約6.5%、11億ドル相当を集め、ソニーの筆頭株主となっていた。
 海外各紙は、その内容と背景について報じている。

【提案内容】
 ローブ氏は14日、ソニーを訪れ、平井一夫CEOに手紙を手渡した。ローブ氏は、ヤフーのトンプソンCEO(当時)の学歴詐称を暴露・辞任に追い込むなど辣腕家として知られるが、ニューヨーク・タイムズ紙によれば、「日本の文化的要因」を考慮したのか、非常に丁寧な文面とのことである。

 ローブ氏は、取締役会への参加を要求する一方、映画や音楽などを手掛けるエンタテインメント部門の一部独立を勧め、投資を申し出ている。
 ソニーは主力のエレクトロニクス部門が不調であり、エンタテインメント部門、およびソニー損保などの金融部門が、その損失を埋め合わせている状態だ。ローブ氏は、エンタテインメント部門という、様々な強みのある「秘密の宝石」が表に出ることで、ソニー株価が60%上昇すると見込んでいる。
 なおウォール・ストリート・ジャーナル紙は、金融部門がすでに同様に分社化されていることを指摘している。

【提案の背景】
 各紙は、昨秋以来、アベノミクス期待により円は下がり、日本の株価は上昇し、海外投資家は日本に注目を増したと報じている。サードポイントも昨秋から日本への投資に踏み切り、好成績であるという。
 アベノミクスは、金融政策、財政政策、そして民間投資を喚起する成長戦略という「3本の矢」を柱とする。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、ローブ氏は成長戦略を特に買っているようだ。
 各紙は、日本では文化的要因から、海外投資家、特にローブ氏のような「物言う投資家(企業価値向上を目的とし、積極的に経営に意見する投資家)」は成功しにくかったと解説している。それだけに、「厳格なヒエラルキーと官僚主義」の払拭は、歓迎されるとのことである。

【ソニーの姿勢】
 ソニーはローブ氏の提案を重視していると伝えられているが、ソニー広報は、エンタテインメント部門は「売り物ではない」と否定的だ。
 エンタテインメント部門は1980年、共同創業者の盛田昭夫氏が、ハードとコンテンツの「車の両輪」を目指して設立した部門である。ただ、「クールなエレクトロニクス王としての冠を明け渡した」アップル社は、コンテンツなしでもハードを売れているとの指摘もある。

Text by NewSphere 編集部