ソフトバンク孫社長、スプリント買収に「強気」の理由とは?
携帯電話大手ソフトバンクの孫正義CEOは30日、米国3位の携帯電話会社スプリント・ネクステルの買収をめぐり、米国2位の衛星放送会社ディッシュ・ネットワークと競合していることについて、ディッシュ社の入札参入を「馬鹿げている」などと一蹴した。
ソフトバンクは10月、スプリント社株式の70%を201億ドルで取得する契約に合意した。暫定的に6月12日、株主の承認を取る予定になっていたが、4月15日、ディッシュ社が255億ドルを提示する殴り込みをかけていた。
孫氏は、ソフトバンクとスプリント社が共同して設備投資できることによる節約メリットや、現金豊富なソフトバンクと違ってディッシュ社には買収のため多額の借金が必要になること、複雑なディッシュ提案の完了には時間が掛かることなどを説いた。最終的に、スプリント社株主にとってソフトバンクとの契約は1株あたり実質7.65ドルの価値があり、それに対してディッシュ提案は6.31ドルでしかなく、対抗して入札価格を上げる必要はないと断じた。
また、ディッシュ社のアーゲン会長は、ソフトバンクには米国でのノウハウがないと豪語していたのに対し、孫氏は、ディッシュ社こそ携帯電話業界でのノウハウを欠くと反論した。孫氏は「スマートフォンのお客様が、衛星経由で動画をご覧になるというのですか?」などと、ディッシュ社が畑違いであり統合メリットがないことを強調した。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ソフトバンクには世界進出の戦略があり、ディッシュ社はスプリント社のネットワーク設備を必要としていると分析する。孫氏は、ディッシュ社にネットワークを貸し出す事には検討の余地があると述べた。同紙は、孫氏とディッシュのアーゲン会長の、「両億万長者の太平洋を挟んだ戦い」がますます激化、個人攻撃的になっていると報じた。
オメガ・アドバイザーズ社など、一部の株主はディッシュ社の提案に興味を示しており、スプリント取締役会はディッシュ社と提案について協議中と伝えられる。だがブルームバーグはソフトバンクとの契約上、スプリント社がライバル提案を株主に推奨した場合、ソフトバンクに6億ドルを支払わなければならないと指摘する。
この日ディッシュ社の株は3.4%下落し、ソフトバンクとスプリント社の株は1.2%および1%上昇した。だがブルームバーグは、スタンダード&プアーズとムーディーズ・インベスターズ・サービスが、スプリント買収により財務体質弱体化のおそれがあるとみて、ソフトバンクの信用格付けをジャンク級に格下げ検討中であると伝えている。