サッチャー元首相の葬儀は「分不相応」?
17日、マーガレット・サッチャー元英首相の葬儀が、ロンドンのセントポール大聖堂で行われ、各紙が葬儀の模様を伝えた(サッチャー元英首相は、8日に脳卒中のため87歳で死去)。
葬列は国会議事堂から霊柩車で出発。途中、棺は儀仗砲兵部隊の馬6頭が牽引する砲車に載せ替えられ、大聖堂へ向かった。ボストン・マラソン爆弾テロ事件の影響から、沿道では数千人の警察官が厳戒態勢を敷いた。
大聖堂には、エリザベス2世女王夫妻やデビッド・キャメロン現首相ら、各国2300人の参列者が招待されていた。エリザベス2世女王は在位61年になるが、英首相の葬儀に参列したのは1965年のウィンストン・チャーチル首相の国葬(今回の葬儀は国葬ではない)のみであり、異例だ。
大聖堂ではキャメロン首相、およびサッチャー元首相の孫娘で米国在住のアマンダ・サッチャー氏が、サッチャー元首相の好んだ欽定訳聖書を朗読した。故人の希望により賛辞は寄せられなかったと報じられているが、リチャード・シャルトル・ロンドン司教がサッチャー元首相との思い出を語るなどした。
サッチャー元首相は、戦後不況を脱する大胆な改革で知られた「シンボル的」人物である一方、労働組合との闘争など、改革の強行ゆえに敵も多かった。ニューヨーク・タイムズ紙は、「重点はサッチャーの政治的成果よりも個人的尊敬にあった」「彼女は死後、論争の人物であり続けることを覚悟していた」などと伝えている。
それだけに、大きな騒乱とはならなかったものの、沿道の群衆からも一部、故人に批判の声が発せられた。各紙は、数で勝るサッチャー支持派の拍手や歓声が、そうした声をかき消そうと努力していたかのように描写している。
また、「国葬一歩手前」と評される豪華な葬儀には、予算の浪費との批判もある。さらに各紙は、参列した政治家がほとんど右派の人物のみであること、国家元首級の参加がごく少ないこと、米国大統領も全員ことごとく招待を辞退したこと、現オバマ政権も現職高官を誰も送らず、チェイニー元副大統領らが参列したのみであることなどを指摘した。