【ケリー長官、日中韓訪問】 北朝鮮問題めぐる各国の課題とは?

 ケリー米国防長官は、4日間に渡る「アジア訪問」で、北朝鮮核問題に対する各国との協力体制を改めて確認した。特に、北朝鮮のミサイル発射を警戒し、対策を強化している韓国と日本に対し、確実な防衛を約束した。
 また、北朝鮮に対しては、核保有武装解除を条件に、話し合いに応じる意向を示した。
 しかし、北朝鮮は核保有の放棄を拒否。韓国からの対話提案も、「南の開城団地(共同経営)の経済混乱の原因を北に押し付けるずるいやり方」と一蹴した。
 故金日成国家主席の誕生日である15日にもミサイルが発射されるとの報道が続いたが、現時点では発射が確認されていない。緊張感が解ける事はなさそうだ。
 海外各紙は、今回の訪問における米国のねらい、各国の立場、今後予想される展開について報じている。

【中国訪問】
 ケリー長官はまず中国を訪問。王毅外相らとの会談後、「米中は非核化の実現に取り組むことで合意した」と述べ、米中の政府間協議を始めることを明らかにした。
 ケリー長官は、中国に対し、北朝鮮の非核化にひと肌脱いでほしいと要請したと報じられている。
 また王毅外相も、朝鮮半島の非核化・対話を北朝鮮に呼び掛け、北朝鮮の挑発抑止に取り組む考えを示しており、2008年12月以来開かれていない6ヶ国協議の再開などを望むことを示唆したという。

 各紙はこの背景を分析している。
 ニューヨーク・タイムズ紙は中国の立場から分析。2月の北朝鮮の核実験に激怒しながらも、中国は北朝鮮の難民対策や、米国の軍隊が中朝間の国境に配備される可能性を嫌がり、あまり北朝鮮に刺激を与えたくないとみている。

 一方フィナンシャル・タイムズ紙は、米国のねらいを分析。北朝鮮と歴史的に関わりの深い中国が、北朝鮮に「きついお灸」をすえてくれるよう望んだが、期待外れに終わったと報じている。

【米国のねらい】
 オバマ政権はイランやシリアとの対話を模索する一方、北朝鮮に対しては「忍耐作戦」として、非核化宣言がない限り直接的な対談を拒んでいる。
 ここ数週間、米国は軍備強化や北朝鮮に対する警告を続けてきた。一方、北朝鮮に対する対話再開の雰囲気を作ろうとする姿勢もみられた。
 ニューヨーク・タイムズ紙は、米国側から北朝鮮との対話に向けて議員を派遣する可能性や、核武装放棄の具体的な対策をすれば対話の可能性がある、というケリー長官のコメントを報道。
 ただしケリー長官は、北朝鮮の行動次第で更なるミサイル防衛対策を立てる可能性もあり、全ては北朝鮮の行動次第だと釘を指している。

 なお、ケリー長官は、今回の訪問において、自国のアジアにおける影響力の強さをアピールする事も忘れなかったと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は大統領のアジア戦略に関連づけて報じている。

【今後の情勢】
 今後の北朝鮮の行動の鍵を握るのは、米国に対する、日中韓を中心とした各国の協力体制だろう。

 安倍首相は、北朝鮮の立場を明確にするために、国際社会(特に6ヶ国協議参加国)の協力が不可欠とコメントしているが、日本が周辺国と抱える問題対策が必要になる。
 ニューヨーク・タイムズ紙は日韓の歴史的問題を、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は日中で抱える尖閣諸島問題を指摘している。

 国境を隔てる韓国の対策も不可欠だ。韓国で展開される軍事作戦は北朝鮮を刺激すると、中ロは警戒。

 また、日韓ともに今回の北朝鮮対策に便乗する形で、米国に対し、安全保障の強化を望む姿勢もあるという。中国の軍備強化が続いていることが、背景にある。
 これらの観点からも、北朝鮮の核問題への対処が一筋縄ではいかず、時間がかかることが予想される。

Text by NewSphere 編集部