北朝鮮をめぐる、米中のジレンマとは?
ケリー米国務長官は13日、中国を訪問し、習近平国家主席など指導部と会談した。高まる朝鮮半島の緊張緩和などを話し合ったとみられる。
北朝鮮は2月12日の核実験後、厳しい制裁を課されている。しかし、その後も挑発行為をエスカレートさせ、日本も国内に迎撃ミサイルを配備するなどの対応をしている。
海外各紙は、米国の打開策が中国頼みである現状と、その中国の不安を報じている。
【米国、イージス艦配備は交渉のカードか】
今回のケリー長官の訪中では、米国のミサイル防衛強化の動きが、中国との大きな取引材料になったとニューヨーク・タイムズ紙はみている。
米国はここ数週間で、日本海に2隻、対弾道弾ミサイル搭載のイージス艦を配備した。北朝鮮の脅威から同盟国を守る、という理由からだ。これに関しては、新しく強化したミサイル防衛システムは、条件次第で撤退可能だという発言もあった。
中国側は、米国の対弾道弾ミサイルシステムは、同国のアジアの「拠点」を固め、中国の封じ込めを図ろうとする戦略の一環とみているという。また、現在増強を続ける中国の軍事力に対抗するためともみているようだ。
中国国営新華社通信は13日、米国がさらに東アジアの軍備を増強し、アジアの同盟国と軍事演習を続けていると報じている。
【中国の微妙な立場】
北京を訪れたケリー長官は、「米国と中国は、平和的な朝鮮半島非核化について共働することをはっきり確認できた」と、両国の協力関係を強調したという。
しかし、北朝鮮に対する中国の立場は難しいようだ。
中国は、朝鮮半島の緊張緩和を進めたい考えはあるという。まず、北朝鮮が混乱し、難民が殺到するような事態は避けたいため。次に、米国が軍備を強化することも望ましくないためだ。
とはいえ、米国との協力を控えたいという思惑もあるという。北朝鮮の現政権が弱体化し、中国領土と韓国・米軍との間にある、自国に友好的な緩衝地域を失いたくないからだと、ニューヨーク・タイムズ紙は報じている。
また、長年の同盟関係から、中国は北朝鮮に対して強い立場にあるが、これまでにも核実験中止の要請を拒否されるなど、絶対的な力を持つわけでもないようだ。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ケリー長官は中国との共働の約束はしたが、北朝鮮への厳しく明白な懲戒を引き出すことには失敗したと報じている。
なお、強硬姿勢を崩さないかにみえる米国だが、ケリー長官は、北朝鮮が核開発の自制について真面目な態度を示せば、対話を再開する意思がある旨述べていると、フィナンシャル・タイムズ紙が報じている。