レバノン首相交代 直面する課題とは?

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レバノン首相交代 直面する課題とは? 国内の政治対立が深まるレバノンで、サラーム元文化相が新たな首相として指名された。同国では、隣国シリアの内戦が長期化するにつれて、アサド政権を支持するイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」と、反政府勢力を支持するスンニ派の、2大勢力が衝突するようになっていた。この溝を埋められず、ミカティ前首相は3月に辞任している。その後任として選任されたサラーム氏はスンニ派だ。
 海外各紙は、同氏が選ばれた背景や今後の課題についてまとめている。

【2大勢力の争いの中、中立性がポイントとなる】
 サラーム氏は、国民議会の128議員中124議員からの支持を受けて選出された。同氏は親米反シリアの「3月14日連合」寄りとされているが、父親も首相経験者で代々政治一家であることや、英国留学の経験があることなどから、その中立性が評価されたようだとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。
 また投票結果から、ヒズボラからも容認されていることが明らかとなったため、今後は派閥にとらわれない独自の舵取りを行なっていくとして、政治的対立の沈静化に意欲をみせているとニューヨーク・タイムズ紙は取り上げている。

 レバノン政界の有力者でドルーズ教徒のジュンブラット議員もサラーム氏に期待をかけているようだ。フィナンシャル・タイムズ紙によると、ジュンブラット氏はサウジアラビアの総合情報庁長官バンダル・ビン・スルタン王子とサラーム氏指名について協議をしており、同国からの支持も得ていると話している。シリア内戦の影響を受けずに、レバノン独自の政治を期待しているという。

【バランスを取った人事が今後の課題】
 レバノンでは1975年から15年間続いた内戦の後、宗教モザイク国家ゆえに権力均衡を図るべく、大統領はキリスト教マロン派、首相はイスラム教スンニ派、議会議長はイスラム教シーア派からそれぞれ選出する決まりとなっている。
 各紙とも、宗教や宗派の利害が絡み合った環境での政治の難しさを指摘している。サラーム氏は今後迅速に選挙制度を整備し、夏を目標に総選挙と組閣を実施しなければならない。なおミカティ前首相は組閣に5ヶ月を要した。サラーム氏も、主要グループ全てからの人材を含む組織作りをする必要があり、組閣において複雑な人選を強いられることになる、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。

 激動する隣国シリアの影響を回避しつつ、自国内の勢力バランスを保ち、政治不安からの脱却が成せるかが注目される。

Text by NewSphere 編集部