香港の港で「1週間」ストライキ 先行き不透明な現状に必要な対策は?
香港のハチソン社港ターミナルで、港湾労働者(下請け業者)によるストライキが1週間以上続いている。背景には、低賃金・長時間労働や、トイレにも満足に行けない過酷な労働環境があるという。企業側は、賃金引き上げなどの要求に部分的にしか応じていない。
ストの影響により、各船会社は他国への経路変更を余儀なくされ、そのコストも日々増えている模様だ。
新聞各紙は、ストライキの発生した背景・現状や望まれる対策について報じている。
フィナンシャル・タイムズ紙は専門家の意見として、香港は中国の輸出入を広く担い、近年勢いを増す上海や深センに比べ、正確さと信頼感で上回るという評価を紹介した。ニューヨーク・タイムズ紙も同様に、位置はほとんど同じなのにコストがかかる香港が多く使用されるのは、欧米やアジア諸国とつながるスピードの速さが理由で、世界で一番効率の良い港だと評している。
しかし同紙によると、今回のストの影響で、既に配送スピードは通常の20倍かかり、これからホリデーシーズンを迎える欧米への輸出など、その影響は世界中に広がりつつあるという。港への評判も同様で、利用者が今後シンガポールや韓国の釜山、台湾の高雄などに移る可能性もある、とフィナンシャル・タイムズ紙や香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は報じている。
今回起こったストライキの原因は、主にその労働環境と賃金の悪さと報じられている。ニューヨーク・タイムズ紙は、香港の労働組合の脆弱さや、中国返還後の香港の中流家庭を取り巻く環境(所得格差や物価上昇による)の変化を指摘。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は、香港の下請け会社において、労働条件は需要と供給に応じて自由に交渉で決められるという現状を紹介している。労働者の現状を考慮せず働かせれば、生活レベルだけでなく労働レベルで不満を感じたストライカー達が、反論の声を挙げるのも無理はないだろうという見解だ。
サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙によると、労働省は職員に必要に応じて週末までに和解策を取る様に促したようだ。ニューヨーク・タイムズ紙は、会社側は差し止め命令を裁判所に依頼、実力行使に出ると報じている。一方、ストライキの主催者は「解雇の脅しも受けているが、ストライキでは労働者の半数を集めているし、資金提供も受けた」と強気な態度であることも報じ、簡単に事態が収束する気配は見られないという。
今回のストライキの問題は、企業・労働者だけでなく、政府側にあるという指摘もみられる。サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙は、香港政府の事なかれ主義を暗に批判し、ストライキが更に拡大する前に、法的手段も含め、素早く具体的なアクションを取るべきだと求めた。