大気汚染の進む中国、環境の改善と経済発展は両立できるのか?

大気汚染の進む中国、環境の改善と経済発展は両立できるのか? 中国の大気汚染による健康リスクは深刻化する一方だ。米中共同研究によると、2010年の中国の死因のうち約15%にあたる120万人が、PM2.5による大気汚染を原因としていることが明らかになった。
 海外各紙は、経済発展を重視するあまり、バランスを崩す中国の様子を取り上げている。

【大気汚染による死亡が増加】
 先月末に中国の清華大学と米国のヘルス・エフェクト・インスティチュートが開催した「大気汚染と健康影響学術シンポジウム」において、世界50カ国303機構488人の研究員による共同プロジェクト「世界の疾病負担研究(GBD2010)」が発表された。その中で、中国では大気汚染で亡くなる事例が増加しており、4番目に多い死因となったという。2010年に大気汚染によって亡くなった人の半数が脳疾患、23%が心臓病、16%が肺疾患を引き起こしていると人民日報傘下のグローバル・タイムズは報じている。大気汚染で亡くなる人々は世界で320万人と言われており、その3分の2が中国やインドを中心に南アジアから東アジアに集中しているという。

 世界中から問題視されるようになったため、中国政府は企業に対して正確な汚染データの開示や、ガスの排出量制限を厳しくするなど対策を強化しているが、発展の妨げになるとして産業界からは軽視されているとニューヨーク・タイムズ紙は指摘している。今後はさらなる自動車の普及や石炭需要・消費の増加に伴い、大気汚染はさらに70%悪化するとも予想されており、状況の改善はまだ遠いようだ。

【経済を支える人材の流出】
 こうした状況下で、首都北京では、経済発展を支える外国人駐在員の出国が続いているとフィナンシャル・タイムズ紙は取り上げている。同国には約60万人、北京には約20万人の外国人が居住しており、その多くが地元経済の発展に大きく貢献している専門職についているという。正確な数字は明らかではないが、小さな子どもがいる家庭を中心に、学期末などを境に中国を離れる人々が後を絶たないと政府や外国人向けの病院の医師らは話しているようだ。
 空気中のPM2.5の濃度は、WHO(世界保健機関)基準の40倍を超えると報じられており、外出のみならず室内での活発な行動も控えるよう警告が出されている程だ。国を去る決意をした家族の中には「子どもが外で遊ぶこともできず、マスクが手放せないなんてSF小説の世界だ」と話しているという。
 有能な人材の流出が続いているものの、その穴埋めは一向に進まないのも現実だ。企業が優秀な人材を採用しようとしても、配置先が中国となると大気汚染を理由に辞退されてしまうため、採用担当は苦戦しているという。

Text by NewSphere 編集部