“教育界のオスカー”を受賞した、イギリス人日本語教師が語る 真の教育と国際化とは?

 イギリス・デヴォン州の静かな町で日本語を教える、クリスピン・チェンバーズ氏が、優れた教育者に贈られるピアソン賞の中等学校教育部門において、2013年の「ティーチャー・オブ・ザ・イヤー」に輝いた。日本語教育を通じ、子供たちに自信と可能性を与えるチェンバーズ氏の功績が、高く評価されている。

 イギリスのローカル紙、プリマス・ヘラルド紙は、チェンバーズ氏を「日本語と日本文化への情熱で、生徒の生き方をも変える素晴らしい教師」と賞の審査員が評価したことを伝えている。

【チェンバー先生って何者?】
 ガーディアン紙は、チェンバーズ氏にインタビューをし、彼の経歴を紹介している。

 チェンバーズ氏は、現在トラヴィストック・カレッジ(イギリス式の中高一貫校)の日本語課主任であり、大学卒業後、英語教師として日本の淡路島に赴任した。

「20万人の日本人と僕だけがいた」という淡路島で、彼は日本語を学んだ。来日後、「シンプルな絵を組み合わせて意味を持たせる」漢字の学習を通し、日本語を学ぶ素晴らしさを実感した。

【マイナー言語の日本語で、子供のやる気を引き出した】
 イギリスに帰国したチェンバーズ氏は、1996年にトラヴィストックで日本語を教え始める。私立校で少人数に教えられる「エリート少数言語だった」日本語を、初めて大規模中等学校に導入したのだ。突然イヤー7(中学1年に相当)の300人の生徒たちが日本語を学び始めたのだから、懐疑的な意見も多かったという。

 ところが子供達には大好評で、日本語クラスは教科として定着していく。その理由をチェンバーズ氏は、日本語は生徒を自由にするからだという。「入学してきた時点で、子供達は能力別に分類されている。ところが日本語を始める時は、皆スタートラインは同じ。誰も何にも知らないから、気軽にやって楽しめる」

 チェンバーズ氏は、日本語学習には良い意味での奇抜さがあるという。子どもたちは、親や他の先生もわからない複雑な日本語の読み書きができるようになり、夢中になる。そしてそれが、「日本語ができたんだから、何だってできる」という自信に繋がるという。「経済規模の大きい日本は、イギリスをヨーロッパへの架け橋として見ている。だから、どんな業界に行っても、教え子達には素晴らしいチャンスがある。日本語が子供たちの未来にきっと役立つはずだ」と語っていく。

【真の国際化とは】
 日本語指導の他にも、チェンバーズ氏は日本への訪問交流などに力を入れる。教え子達は、日本の子ども達と触れ合う事によって、既成のイメージを打ち消し、日本人を理解するという。

 彼は、国際化のためには、いろいろな国の子供達を一緒に集めればよいと言う。言葉は問題ではなく、知らないことを知っていることに変えていくこと、それが真の国際化だと述べている。

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Text by NewSphere 編集部