アップル社長が中国の消費者に謝罪 その理由とは?
米アップルのティム・クックCEOは1日、同社の中国語版ウェブサイトに消費者向けの謝罪文を掲載した。中国の国営中央テレビ(CCTV)や、共産党の機関紙・人民日報などが、3月半ばから、アップル製品のアフターサービスが他国と異なるなどとして批判を続けていたことが背景にある。同社は、中国での同製品の保証内容を変更したと明らかにした。2012年4月1日以降に修理したiPhone4と4Sについて保証期間を1年延長し、今後両製品が故障した際に新品と交換すると約束した。なお、当初アップルは、中国と他国の保証内容に大差はないと説明していた。
海外各紙はこれを異例の措置だと報じ、背景にある米中問題について考察した。
【アップルの狙い】
現状、アップルにとって中国は生産拠点であり、米国に次ぐ第2の重要な市場でもある。クック氏は1月の訪中の際にインタビューを受け、中国は米国を抜いてアップル最大の市場となる可能性があると述べていた。今回の異例の対応は、中国のスマートフォン市場でさらなる販売拡大を狙いたい考えが背景にあるとみられる。なお、アップルの主力製品であるiPhoneは、まだ携帯キャリア中国最大手のチャイナ・モバイルは販売していない。
【中国でのアップルの立場】
CCTVは、毎年3月15日の国際消費者権利デーにちなみ、消費者を欺く企業に関する特別番組を恒例で放送している。今年の標的の1つがアップルだった。
アップルは近年、iPhoneなどの生産を請け負っているホン・ハイ・プレシジョン・インダストリー(=フォックスコン)の従業員の相次ぐ自殺、iPadの商標権をめぐる争いを経て、中国で監視下に置かれていたとウォール・ストリート・ジャーナル紙は指摘した。また、中国の規制当局は、アップルなどの電機メーカーの消費者権利に関する慣行について、監督を強化する方針を先週明らかにしたと同紙は報じた。
【中国側の真意とは?】
一連のアップル批判は、オバマ政権がサイバーセキュリティ問題で中国に圧力をかけている時期と一致するとニューヨーク・タイムズ紙は指摘した。米政府内では今年初めから、中国通信機器大手のファーウェイとZTE(中興通訊)の米国市場での事業拡大を阻む動きがある。中国当局が両社製品を通じてスパイ行為を行うおそれがあるという国家安全保障上の懸念が理由だ。今回の批判は中国メーカーからの機器調達を規制する措置に対する報復とも考えられると同紙は示唆した。