ギラード首相続投、オーストラリア政府は変われるか?

 オーストラリアのギラード首相は21日、与党・労働党が実施した党首選で首相に再選され、9月の総選挙までの続投を決めた。対立候補だったラッド前首相は十分な支持が得られていないとして出馬せず、首相の他に立候補者はいなかった。

【突然の投票】
 フィナンシャル・タイムズ紙は突然行われた党首選の背景を考察している。労働党は現在、ギラード首相とラッド前首相の間の確執などの影響で支持率が低迷しているという。クリーン地域開発・地方行政相はこの現状を懸念し、結束を図る目的で党首選の実施を要求し、首相はこれを受けた形だと報じられている。しかし、“不意打ち”を食らったラッド氏は「状況が整っていない」との理由で不出馬を余儀なくされ、公平な印象が薄いことを同紙は指摘する。ギラード首相は「主導権争いは終わった」と述べ、党内の結束を図り、9月の総選挙に向けて支持率の回復に努めると訴えた。ただし専門家は、首相・党の支持率は今後も下落し、政権の終焉が近付いていると厳しい評価をしている。

【確執】
 ギラード首相の党首続投が決まったものの、ガーディアン紙は、今後も首相とラッド氏の確執は続くと指摘する。既に労働党の支持率は野党をも下回り、政権維持が困難と言われている。
 また党内では、国民の人気が高いラッド氏の復帰を求める声が根強く、首相はラッド氏待望論が盛り上がる前に、先手を打って党首選に踏み切ったと同紙は分析する。両者の確執が続く限り、労働党の再生は厳しく、同紙は9月の総選挙で党の大敗を予想する。

【謝罪】
 一方ニューヨーク・タイムズ紙は、過去の「強制養子縁組」問題について紹介。ギラード首相が、戦後から20数年間にわたって、未婚女性が出産した子どもが強制的に養子縁組されていた問題について初めて公式に謝罪したと報じた。ギラード首相は「生涯心に残る傷と苦しみを生み出した」と謝罪の言葉を述べた。政府の調査でおよそ22万5000人の新生児が強制的に母親から引き離され養子となっていたことが明らかになった。同紙はギラード首相の勇気ある演説に多くの観客が感動し、称賛したと報じ、労働党の支持率向上にも一役買ったのではと評価している。

Text by NewSphere 編集部