習近平体制発足 日本各紙が日本に求める「対中姿勢」の違いとは?
中国の全国人民代表大会は14日、習近平・共産党総書記を国家主席に選出した。胡錦濤・国家主席の後任となる。習氏は昨年11月の党大会を経て党総書記、党中央軍事委員会主席に就任していたため、党、軍、国家の権力を正式に掌握したことになる。本格的な習体制の発足にあたり、日本各紙(朝日・読売・産経)は対中国・対日本の視点で課題を論じた。
【習体制をどうみるか】
各紙に共通しているのは、対外的に強硬姿勢が目立つ中国への警戒感である。特に産経新聞は、「反日行動主導」、「日本の領海・領空侵犯」、「国防費の増加」、「国家海洋局への統合・権限強化」などの動きを挙げ、習氏を“警戒すべき指導者”とみている。こうした動きの背景には、アヘン戦争後の屈辱を晴らし、アジアの盟主に返り咲くことを狙う意図があるのではと指摘。周辺国にとっては“迷惑”で“危険”と非難した。
さらに、汚職、格差、環境汚染などの国内の不満をそらすために、対外強硬姿勢をとっているとも分析している。こうした部分の改革を胡錦濤・前政権は目指していたが、習氏の政治基盤である太子党・上海閥・軍は“骨抜き”にしたとも批判している。
読売新聞も、直接糾弾するような表現は避けつつも、中国の対外姿勢への警戒感を明らかにしている。いまや世界第2位の経済大国となった中国は、10年前よりも、世界の安定に責任を果たすべきと論じている。
朝日新聞は、日本との間で深まる溝を憂慮しつつ、習氏が対内的には強いリーダーシップを発揮していることを報じた。「中華民族の偉大な復興」を唱えてナショナリズムを刺激するとともに、反腐敗を唱え、腐敗の温床と何されていた鉄道省の解体に踏み切るなどで、国民からの支持を得ているという。ただこれは、政権維持のためには、経済成長以外の形でも国民を満足させる必要があるという、党にとって厳しい環境変化を示しているとも分析した。
【日中関係の行方は】
習近平氏の国家主席就任にあたり、安倍首相は祝電を送り、菅官房長官は「戦略的互恵関係」を築く用意があると述べた。1月の山口公明党代表の訪中など、日本は日中関係修復に向けた動きを見せてきた。
しかし、“熱は冷めてきた”と朝日新聞は指摘し、尖閣周辺の実効支配を狙ったとみられる「国家海洋局の権限強化」、「東日本大震災追悼式の欠席(台湾代表の扱いに抗議)」、「東京裁判の認識に関する論争」などを取りあげた。
産経新聞は日本に対して、東南アジア諸国、インド、モンゴル、ロシア、韓国など周辺国都の連携を強化すべきと述べている。政治面だけでなく、経済分野で諸国と連携し、対中依存を脱却することで、中国に圧力をかけるべきという主張だ。また別の問題として、日本が憲法などで“防衛の手足を縛られている”ことを挙げ、集団的自衛権行使容認など、安全保障体制の強化を求めている。
なお読売新聞はアメリカとの連携強化を求めている。
総じて、中国の対外姿勢に対する警戒感は共通しているといえる(温度差はあるものの)。そのうえで日本は今後どうあるべきか、という部分では、各紙の違いが明らかになったといえる。