マレーシア、フィリピンの武装集団を撃退 総選挙を控えた両国への影響は?
マレーシア・ボルネオ島サバ州に不法上陸したフィリピンのイスラム系武装集団に対し、マレーシア治安部隊が掃討作戦を展開している。作戦展開前には度々衝突がおき、双方に死傷者が出ていた。マレーシア当局は、武装集団を「テロリスト」とみなし批判。マレーシアのナジブ首相は、「侵略者がサバ州を去る意図がないと判断し、軍事行動を決断した」と述べた。一方武装集団側は、スールー王国軍(15世紀に建国)を名乗っている。
海外各紙は、今回の軍事行動によってマレーシア、フィリピン両国の指導者に深刻な政治問題が持ち上がったと報じた。
【両国の政治状況】
マレーシアのナジブ首相は6月に総選挙を控えているため、今回の対立は厄介な事態だ。一方、フィリピンのアキノ大統領は5月の総選挙には出馬しないものの、党員が上下院で勝利することは彼の政治課題を成功させるために重要である。
サバ州に侵入したイスラム武装集団の指導者であるジャマルル・キラム3世は、政治的に重要なフィリピン南部ミンダナオ地域で支持されている。アキノ政権は、キラム3世に対して強硬姿勢をとれば次の総選挙で票を失いかねないため、注意深く取引しているようだとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。ただ、既にアキノ大統領が「スールー王国軍」に賛同しないとして、一部から批判を受けていることをフィナンシャル・タイムズ紙は報じた。
また、フィリピン政府は昨年10月、南部ミンダナオ地域で、別のイスラム武装集団「モロ・イスラム解放戦線」と和平協定を結んだところだ。今回の対立で、ようやく締結にこぎつけた和平協定を危うくするのではと、フィリピン当局は懸念しているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じた。
【アジア企業の反応】
今回の対立を機に、多くのアジアの企業が危機管理計画を再考し始めたとフィナンシャル・タイムズ紙は報じた。1月にアルジェリアの天然ガスプラントで起きた人質誘拐・殺害事件に続き、サバ州の事件は、アジア企業が予期しない事件がどこでも起き巻き込まれる可能性があると、専門家は同紙に語ったという。