日銀総裁候補・黒田氏の発言の影響は?海外紙が分析

 4日、日銀新総裁に指名されている黒田東彦(はるひこ)・アジア開発銀行総裁が、国会(衆院議院運営委員会)の所信聴取で、「デフレ克服のため必要なことは何でもする」と決意を語った。昨年、欧州中央銀総裁も「(ユーロ安定のために)必要なことは何でもする」と発言して債券市場の不安を鎮静化させたが、その例を彷彿とさせるものだ。

 安倍政権は1月、渋る日銀に2%のインフレ目標を呑ませたが、日銀としては2014年度のインフレ予測を0.9%程度とみており、日銀政策委員会には2%目標を「達成困難」とする声もある。それに対し黒田氏や副総裁候補の岩田規久男氏は、2%目標を「2年程度で達成する」と強気だ。
 黒田氏はそのための手段として、日銀の資産購入プログラムの拡大計画前倒しに言及した。信用維持の観点から、日銀は国債購入の上限を通貨流通量上限までとする自主規制を行っているが、黒田氏はその廃止をも検討するという。
 さらに購入対象範囲についても、満期まで3年を超える国債の購入や、より高リスクな資産の購入に言及した。黒田氏は、中央銀行が長期債を購入することは「自然」と述べている。また、諸外国から意図的な通貨操作との批判もある円安傾向について、円安は金融緩和の副産物であって、通貨安そのものが目標ではないと否定した。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、これを受けて10年債利回りがこの日7%低下したと報じた。日銀が資産購入プログラムを立ち上げた2010年10月の8%下落以来、最も急な1日下げ幅だった。
 一方で、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は発言を受けて円相場が1ドル93.72円から93.25円に上がり、日経平均株価は下落(終値としては0.4%上昇)したと報じた。市場発信能力を買われて指名されたとされる黒田氏だが、この日の市場からすれば、国債の購入拡大は見えるが、その後のデフレ克服まではまだ見えてこない、といったところなのであろうか。

Text by NewSphere 編集部