HIV感染乳児、初の治癒成功 今後のHIV治療に生かせるのか?
アメリカのジョンズ・ホプキンス小児センターなどは3日、エイズウイルス(HIV)に感染した新生児の治癒に成功したとみられると発表した。アトランタの学会での発表によると、感染者を母親に持つ新生児に対し、出生から31時間以内に3種類の抗レトロウイルス薬による治療を行い、1ヶ月後にはウイルスは検出されなくなったという
海外各紙は、今回の発表の希望と懸念について報じた。
HIV感染者の治癒は2例目となる。最初のケースは「ベルリンの患者」として知られる成人男性で、2007年、骨髄移植を受けて治癒していた。
今回の報告により、HIV感染者からウイルスを除去する別の方法がある可能性が出てきたとフィナンシャル・タイムズ紙は報じた。同紙は、「この治療が抗レトロウイルス療法のみで達成したと考えると、我々は新生児の免疫システムについて、大人とどう違うのか、どんな要因で子供が治ったのか、もっと知ることも必要だ」という米国エイズ研究財団のジョンストン医師のコメントを掲載した。
ただ、今回の治療法を他のHIV感染者にも応用できるかはまだ不明だという。
今回のケースは、誕生直後に積極的な抗レトロウイルス剤投与を始めたことが治癒につながったのではないか、と研究者は見ているという。そのため、今回のケースは研究者には新たな道を開くが、感染者がすぐに恩恵を被るものではないだろうと報じた。
世界保健機関(WHO)は現在、出産直後の積極的な投薬は勧めていない。しかし、今回のケースを機に研究が進むことで、(主にサハラ以南のアフリカで生まれる)毎年30万人以上というHIVに感染した子どもの積極的な治療が可能になるかもしれない、とウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。同紙はまた、「我々はまだ予防に焦点を当てる必要がある」という、治療に当たったミシシッピ大学医療センターのハナ・ゲイ医師のコメントを掲載した。