アメリカからの支援決定 それでもエジプトが不安定な理由とは

 ケリー米国務長官はエジプトを訪問し、経済支援として2億5000万ドル(約234億円)を拠出する方針を明らかにした。国際通貨基金(IMF)からの48億ドル融資の条件である政治・経済改革に、モルシ氏が「早期に取り組むと確約した」ことを受けての発表だった。昨年モルシ大統領が就任した際、オバマ大統領は4億5000万ドルの長期的な財政支援策を発表しており、今回の支援はその第1弾となる。
 海外各紙は支援の詳細や未だ不安定なモルシ政権の現状を報じている。

【早期の政治・経済改革を促す財政支援】
 アメリカはまず、1億9000万ドル(約178億円)を政府へ、6000万ドルを民主改革の重要な原動力である中小企業へ直接融資する方針だとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。
 ケリー氏は「エジプトに求めることは至ってシンプルで、モルシ大統領がIMFと融資交渉を締結させ、国民が経済的に自立できるような環境を整えることだ」と述べているという。実際今回の会談でアメリカ側は、IMFから提示されている増税などの条件を受け入れるよう、強く求めたようだとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。さらに、これらの条件をクリアするためにも、反大統領派との溝を埋める努力を行い、4月に控えた議会選挙の実現を促したという。

【窮地に直面する大統領と国民】
 とはいえエジプトの政治的な亀裂は大きい。モルシ大統領の就任以来、同氏やムスリム同胞団による独裁が進むことを懸念する声が他党から挙がっていることを、フィナンシャル・タイムズ紙は取り上げている。4月の議会選挙について、世俗・左派を中心とする野党連合体「国民救済戦線」はボイコットを表明している。
 今回のアメリカによる支援発表に対しても、反大統領勢力は、「アメリカは自国の利益のためにモルシ大統領を支援している」と反発。ケリー氏の訪問に対して、首都カイロでは反米デモが行われる事態まで発生した。

 また、エコノミストによると、不安定な情勢が引き金となってエジプトの観光収入や外貨準備高は減少しており、外貨準備高は通常の3分1程度の136億ドルという危機的水準にあるという。さらに、国民への補助金政策が政府にとってさらなる負担となっているとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。

 アメリカからの援助を活用して、膠着状態を打破できるのか。国内の対立の根は深く、IMFから融資を受けるまでの道のりは遠いと言わざるを得ない。

Text by NewSphere 編集部