アメリカ、「及び腰」のシリア援助 その影響は?
欧州訪問中だったケリー米国務長官は28日、訪問先のローマで、シリアの反体制派を支持する有志国が開催した、いわゆる「シリアの友人」会合に出席。記者会見で、反体制派に対し、米軍の携行食であるMREや医薬品を支援すると発表した。
シリア内戦の外交的解決が暗礁に乗り上げて以来、オバマ政権は新方針を模索してきたとされる。フィナンシャル・タイムズ紙は、昨年には武器提供の案も浮上し、ペンタゴン、国務省、CIAの賛成を得るに至ったものの、イスラム過激派の手に武器が渡ることを強く懸念するホワイトハウスがストップをかけた、と報じた。
とはいえ、サウジアラビア、カタール、UAEの各国がトルコやヨルダンを介して小型武器を提供している状況で、「アサド後」を見越した動きが必要ともされてきた。さらにシリア反体制派からの要請はもちろん、欧州、なかでも英国からの強い後押しも無視できない状況だったという。内戦後の影響力強化の狙い、さらに、イスラム過激派が市民への援助を通じ支持を高めることへの懸念などから、方針転換への慎重な第一歩を踏み出したと見られる。
アメリカのほかイギリスも、さらに「大胆」な支援を表明。防弾チョッキや夜間スコープなどの提供を申し出たというが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によれば、こうした欧米の「思い切った」支援も、反体制派からは「まったく足りない」と一刀両断された模様だ。訓練の意義を認める向きもあるにはあるが、「政府軍が攻勢を強め、アレッポにスカッドミサイルで攻撃している現状を、武器もなくどのように打開すればいいというのか」という憤激や、「欧米は、アサドの暴虐よりも、兵士の髭の長さを重要視して、過激派と決めつける」との不満の声が上がったという。
ただし、アメリカ軍の援助は上記にとどまらない。ニューヨーク・タイムズ紙が匿名筋からの情報として伝えたところによれば、CIAによる反体制勢力に対する訓練計画もヨルダンで既に密かに進行中だという。さらに、地元の活動家などにすでに提供した5000万ドルに加え、6000万ドルを援助する見通しだ。政府の支配から外れた地域での衛生、健康のほか、私刑や復讐を防止するための法整備など、行政の費用に当てられるという。ただでさえ財政赤字に汲々としている議会の承認が得られるかが問題だが、ケリー氏は自信をにじませたという。
識者は、今回の供与が過激派の手に渡らなかったり、効果が認められたりすれば、アメリカがさらなる支援に乗り出す可能性が高いとの予測している。
なおケリー氏は来週、トルコ、カタール、UAEを訪問し、シリア問題を主に話し合う予定。交渉の今後が注目される。