イタリア、安定政権発足のカギとは?

 イタリア総選挙の結果、上院でどの党も過半数を獲得できず、安定政権の成立が危ぶまれている。緊縮財政を推進する姿勢の中道左派連合は下院で過半数を確保したものの、上院では、ベルルスコーニ元首相率いる中道右派政党や、旧来の政治を強く批判する「5つ星運動」などが躍進した。
 海外各紙は、イタリア政局の不透明な行方について分析している。

【我慢の限界】
 ニューヨーク・タイムズ紙は、今回のイタリアの選挙結果は、国民の忍耐が限界に来たことを示していると報じた。昨年末から報じられているように(「モンティ伊首相辞意表明」)、イタリアではモンティ首相によって緊縮財政が推進されてきた。しかし、それに反対するジュゼッペ・グリロ氏率いる「5つ星運動」が大躍進を遂げるとともに、ベルルスコーニ前首相率いる中道右派が得票率で中道左派連合に匹敵する健闘ぶりを見せたことにより、有権者が緊縮財政に対して我慢できなかったと同紙は分析している。
 モンティ首相の緊縮財政策は他国のリーダーからは歓迎されていたが、自国では怨嗟の的であり、増税や年金改革などに対する国民の怒りの度合いは、ほとんど誰も予期できないほどであったと同紙は評している。

【安定政権は誕生するのか?】
 フィナンシャル・タイムズ紙は、「5つ星運動」がシチリア島で果たしている役割を国政でも再現するのではないかと見ている。「5つ星運動」は、昨年10月に実施されたシチリア州議会選挙で比較第一党になったものの、既成政党との連合を拒んだ。野党として、政策ごとに「是々非々」で与党に協力していると報じられている。シチリア州知事によると、同島の政治トレンドはイタリア本土のさきがけとなるケースが多いという。

 その「5つ星運動」の創設者であるベッペ・グリッロ氏は27日、下院第一党を確保した民主党のベルサニ党首を、”いかがわしい政策を提案してくる政治的ストーカー”と、自身のブログで酷評した。ただし「5つ星運動」としては、こうして対決姿勢を保つことで、政局が混乱し再選挙となることは、現在の勢いに水を差すリスクがあるという。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、今後行われる予定の首相指名で、「5つ星運動」の議員が退場して過半数のレベルを引き下げるという、「消極的な第一党支持戦術」に出る可能性もあると予測している。

【ユーロ危機は終わったか?】
 混迷する政局を受けて、ニューヨーク・タイムズ紙は、ユーロ危機は本当に過ぎ去ったのかと問題提起している。同紙は、昨年9月に欧州中央銀行がイタリアやギリシアなどから大量の国債を買い上げると同意した裏には、各国が財政健全化に向けた政策を取ることが暗黙の条件になっていると指摘。政局が安定しないイタリアが、今後その条件をクリアするのは難しいという識者の見解を紹介している。

Text by NewSphere 編集部