米軍不信渦巻くアフガニスタン 黒幕と米軍の対応は?
アフガニスタンのカルザイ大統領は、米軍の特殊部隊、および、特殊部隊と行動するアフガニスタン人らによる、住民への嫌がらせ、拷問、拉致、殺人などの報告が寄せられているとし、ワルダク州からの2週間以内の撤退を要求した。
大統領の外国の軍事活動への牽制は、先週のNATOへの空爆要請禁止にも表れていたが、ここまで辛辣で直接的な非難は初めてのことだという。
フィナンシャル・タイムズ紙の報道によれば、この発表の直接的な発端は、24日、ワルダク州知事が国家安全評議会に報告書を提出したことだった。州知事は、過去3ヶ月間、地元の長老や住民からの、米軍特殊部隊への苦情が急増しており、住民9人の逮捕・失踪事件や地元の大学生の殺害事件への関与が疑われていると述べた。州知事としてのアメリカ軍への説明要請に対しても回答はなかったという。
こうした事件の実行犯は、米特殊部隊の通訳とも米軍が訓練した民兵とも、アフガニスタン人とも、アメリカ人とも、アメリカ系アフガニスタン人とも、憶測が飛び交っている模様。実際、米軍筋が民間人の服装をしていることも、民間人が軍服を着ていることもあり、事実上、特定は困難な模様だ。
NATOは過去の調査では米軍特殊部隊への嫌疑は裏付けられていないとしている。ただ、こうした不透明な状況下で米軍への非難が噴出し、大統領の米軍撤退要求に対して民衆からは歓迎の声が上がっているという。これは、大統領自身を含め、アフガニスタン人の「米軍不信」の強さを物語っていると報じられている。つまり、自国で「これ以上好き勝手にされたくない」という気持ちの表れだというのだ。
とはいえワルダク州は、首都カブールの南西に位置し、旧支配勢力タリバンの活動の温床になっているともされる重要州だ。在留外国軍の撤退が進むなか、米軍特殊部隊の役割がより重要性を増す微妙な時期でもある。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ここに米軍が駐留し、タリバンの首都流入の「防波堤」の役を果たす意義は、アフガニスタン政府筋も認めていると報じた。一部には、今回の「黒幕」が「米軍特殊部隊か、タリバンか、個人の犯罪者か」不明だと述べる向きもあるという。
フィナンシャル・タイムズ紙は、上院議員として長くアフガニスタン問題に関わり、カルザイ大統領とも親交のあるケリー国務長官が、同大統領の理性的な人柄を認めたうえで、アフガニスタンとワルダク州の懸念の正統性への理解を示し、「アフガニスタン国民の訴えに適切に対応すると保障する」と述べたと伝えた。
大統領が「2週間」とした期限後に、特殊部隊が撤退するのか、米軍の軍事活動の制約交渉に落ち着くかは、25日の時点では未定だという。数日内に着手が予定されている、NATOとアフガニスタンの共同調査の行方が注目される。