義足の金メダリスト、殺人容疑で逮捕 報道される英雄の「影」とは
両足義足の陸上選手で、昨夏のロンドン五輪・パラリンピックに出場したオスカー・ピストリウス選手(南アフリカ)が、14日、恋人でモデルのリーバ・スティーンカンプさんを殺害した容疑で逮捕された。ウォール・ストリート・ジャーナル紙の報道によると、警察は14日未明、ピストリウス氏の自宅から叫び声がするとの隣人による通報で現場に駆けつけたが、スティーンカンプさんは4発の銃弾を受けており既に死亡していたという。
15日に行われた公判では、検察側は「計画的な殺人」の疑いに言及した。ピストリウス氏側は異議を申し立てており、今後は19日に開かれる審理での真相解明がまたれる。
海外各紙は、強盗と間違えて発砲したという同氏の証言に対して、過去の問題や怒りっぽいとされる性格などを取り上げ、世界中にショックを与えた事件の真相を探っている。
同紙は、業界誌の発行人であるモンティ氏が、「ピストリウス氏ははかんしゃく持ち」で有名と語っていると報じた。実際、フィナンシャル・タイムズ紙によると、 ピストリウス氏は2009年にも自宅で女性に暴力を振るったとして逮捕されたという。なお直後に訴えは取り下げられている。 昨年のパラリンピックでは、男子200メートルでオリベイラ選手に敗れた直後、「彼の義足が長すぎる」と感情を露わにして抗議したこともあったと指摘している。
大きな障害を乗り越えてきた偉大な選手による事件が、世間に与えるショックの大きさを各紙は報じている。南アフリカのズマ大統領は、同氏を「国民が誇るスーパーパフォーマー」と高く評価し、国内におけるスポーツ強化を呼びかけていたとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。また、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、オリンピックやパラリンピックなど同氏と交流があった人々のコメントを取り上げている。多くの選手が「魅力的で親しみやすい良い人」、「パラリンピックのアイコン的存在であり、選手の手本だった」と述べており、ショックを隠し切れないようだと報じている。
また、同氏を広告に起用していたナイキやブリティッシュ・テレコム(BT)、サングラスのオークリー、香水のテュエリーミュグレーのうち、ナイキのみ、ウェブサイトからその広告を削除している。残りの企業は捜査中であるため対応やコメントを控えたという。
なおニューヨーク・タイムズ紙は、銃犯罪が多い南アの現状にも注目している。この10年間で銃規制が強化され、1999年の殺人事件の31%を占めていた銃による事件は2009年には17%に減少しているものの、あいかわらず強盗は多く自衛のために銃を所持する人も少なくないと報じている。ピストリウス氏も9ミリの自動小銃を所持しており、食器洗い機の稼動音を強盗と間違えて銃を構えそうになったことを自身のツイッターに投稿していたという。