パキスタン爆弾テロ相次ぐ 住民の怒りが政府に向かう理由とは
16日、パキスタン南西部のバルチスタン州クウェッタで、イスラム教シーア派住民を標的とした爆弾テロが発生した。死亡者は最低でも80人、負傷者は最大で180人と推定されている。翌17日には、シーア派住民による抗議行動が同市で行われた。同様のテロは先月10日にも起きており、死亡者は93人、負傷者は169人にのぼっていた。
ガーディアン紙(英)は、テロ現場の生々しい模様を報じている。テロの現場は市場であり、爆発によって果物や野菜が路上に散乱していたという。さらに目撃者によると、多数の女性と子どもが死亡。通学カバンや教科書が瓦礫の中にあったという。
怒りに駆られた住民が、燃えるタイヤでバリケードを築き、通りすぎる車に向かって投石したとも報じられている。
相次ぐテロ事件を受け、政府が批判の矢面に立たされているとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。
政府がテロリストを追跡するという約束をしない限り、遺族たちが死体の埋葬を拒否しているという。さらに17日には、事件が発生したクウェッタ以外の都市においても、抗議行動と座り込みが行われ、殺戮に歯止めをかけられない中央政府の無策を、シーア派の指導者たちが糾弾。同紙によると、イスラム教シーア派で少数部族のハザラ人は、ここ数年、イスラム教スンニ派から数えきれないほど攻撃を受けているともいう。
アルカイダとのつながりも囁かれる武装組織がテロ行為をエスカレートさせている現状に対し、テロ組織は政府の庇護のもとでシーア派を虐殺しているのだ、と非難するシーア派指導者もいると報じられている。フィナンシャル・タイムズ紙によると、事件が起きたクウェッタの管理を、州政府ではなくパキスタン軍に引き渡すべきであると求める市民も出てきたという。
なおニューヨーク・タイムズ紙は、事件の関与が疑われるスンニ派テロ組織の思考形態を取り上げている。それによると、テロ組織はハザラ人を”不純”なものと見なしており、”クウェッタから彼らの存在を浄化する”ことを目指しているという。