欧州の馬肉混合スキャンダル 発端はどこだ?
欧州各国で販売されていた「牛肉100%」の冷凍食品に、馬肉が混合していたことが発覚し、一大スキャンダルとして波紋が広がっている。EU保健担当委員会や各国関係機関が調査を進めるなか、オランダやルーマニアの業者に疑惑の目が向けられている。
海外各紙は各国の反応や、食品の複雑な流通経路を背景にした責任のなすりつけ合いの様子を報じている。
【広まる警戒】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、EU当局は、今後数ヶ月間にわたりEU内で流通している牛肉製品の実態を検査する計画を提案したという。27カ国で2500品の加工製品を検査する内容だ。馬肉に含まれることがある、抗炎症薬の予防接種の残留物は危険であるため、4000のサンプルを回収し検査する予定だという。
今回のスキャンダルは、1月にアイルランドで販売されていた冷凍ビーフバーガーに馬肉が混合していることが発覚して以来、英国、フランス、スウェーデン、スイスなどでも相次いで同様の報告が挙がり、深刻さが明らかになった。現時点で、馬肉の詳細な混合ルートは不明。消費者の不安が募るなか、ドイツやオランダ、ベルギー、フランスなどのスーパーマーケットの店頭からは、ラベルの不正表示の可能性がある製品が次々と姿を消しているとガーディアン紙は報じている。
今後は、欧州刑事警察機構(ユーロポール)が各国の捜査をまとめる方向だと報じられている。
【各国で責任のなすりつけ合い】
各紙は、関与が疑われているオランダの食肉輸入会社を名指しで報じた。同社はルーマニアの業者から食肉を仕入れ、フランスの食品処理会社などへ出荷しており、過去にはイスラム教徒向けのハラルミート(牛)として馬肉を不正販売し実刑判決を受けたこともあるという。
ただ、ガーディアン紙の取材に対して同社は、食肉を調達しているルーマニアの業者からは、牛なら100%牛肉、馬なら100%馬肉を、加工前の状態で受け取ったとしており、フランス企業へ出荷した際は全て「馬肉」であることを明記していたという。不正を実施できるとすれば、食品加工業者だという主張だ。
一方、仏調査委員会は、フランスに馬肉混合製品が入ってきたのはオランダからだとしているが、供給元は明言していない。
また、EU加盟により国道での馬車走行が禁止されたルーマニアでは、大量の馬が殺害されており、その肉を海外に販売している、といった風評被害が生じているようだ。ガーディアン紙は、同国政府はルーマニアに事の発端の疑惑をかけるフランス政府を「バカ」呼ばわりして反論したと報じている。
なお、欧州の食品流通網では4~5社の仲介業者が介在することもあり、その複雑さが問題となっている。今回の騒動も、その状況を利用した国際的な犯罪の可能性も絡んでいるものとして調査が進んでいるようだ。