史上最大の米欧貿易協定 その障害とは?

 米国とEU間での、巨大な貿易協定交渉が動き出そうとしている。
 オバマ米大統領は12日の一般教書演説で、「EUとの包括的な“大西洋貿易および投資パートナーシップ”に関する協議」を立ち上げると述べ、「自由公正な大西洋横断貿易が、アメリカ人の何百万人分もの好賃金の雇用をサポートする」との期待を表明した。
 欧州委員会のバローゾ委員長も、「我々はともに、世界最大の貿易圏を形成するでしょう・・・納税者に1セントの負担も掛けずに経済を後押しするのです」と語っている。

 米国とEUを合わせれば、全世界経済生産の半分を占める巨大な経済圏となる。米国にはアジア太平洋地域という選択肢もあるのに対し、経済危機と高失業率にあえぐヨーロッパ側の方が明らかに必死との見方もある。
 しかし、米国へのメリットも大きいと見られている。貿易協定によって関税がゼロになる可能性や、規制基準が統一されて輸出メーカーが製品の作り分けをせずに済む可能性、さらには中国などの新興国に先駆けて貿易ルールや製品のグローバルスタンダードを奪取する狙いがあるとされる。米国商工会議所の推定では、現在約1兆ドル相当の米欧貿易が、5年以内に1200億ドル拡大するとのことである。

 各紙は、すでに充分な成算が立っていなければオバマ政権がこれに注力することはないと見て、注目している。協議はEU各国の承認後、6月にも始まる可能性があり、2014年末までの完了が目標であるという。フィナンシャル・タイムズ紙によるとそれは、EUを代表して交渉するとみられるドゥグヒュト通商担当委員ら、現在の欧州委員会の任期切れ時期だからであり、次のEU指導部が協定に前向きとは限らないからのようだ。

 しかし、現在までこのような協定が成立しなかったのは、ホワイトハウスの顧問によれば「誰も思い付かなかったからではない」。各紙が最も不安視する両者の相違は、EU域内では厳しく規制されている一方、米国では広く認められている遺伝子組み換え食品など、食品安全規制や環境規制である。実際バローゾ委員長は、「商業利益のために我々の消費者の健康を犠牲にしようというものではないの」と妥協しない姿勢を表明している。
 またニューヨーク・タイムズ紙は、内部でさえ常日頃合意がまとまらないEUの体質も懸念している。

Text by NewSphere 編集部