ちぐはぐなイラン核戦略 欧米・イスラエルはどう対処するのか?

 イランのアッバシ原子力庁長官は13日、先月から中部ナタンズの核施設に新型の遠心分離機を導入し、ウランの濃縮活動を加速させていることを明らかにした。アッバシ長官は、この濃縮活動は核兵器の開発につながる濃縮度20%のウランを製造するものではないとしているが、欧米やイスラエルは警戒を強めている。
 
 またイランの核問題をめぐる協議が13日、イランの首都テヘランで、イラン当局者とIAEA(国際原子力機関)のナカーツ事務次長との間で行われた。協議後、ソルタニエIAEA大使は「幾つかの点で合意した」と述べた。また「双方はさらに協議する」と述べたが、時期については語らなかった。焦点となっていた核兵器開発との関連が疑われているテヘラン郊外のパルチンの軍事施設について、これまでIAEAの立ち入り要請にイランは難色を示してきた。
 なお26日にはカザフスタンで、イランと関係6カ国(米国、中国、ロシア、英国、フランス、ドイツ)による協議が予定されている。
 海外各紙は、高まるイランの核開発疑惑を懸念し、今後の協議の難航を予想している。

【イランの戦略】
 イランは12日、濃縮度20%のウランの備蓄の一部を原子炉燃料に変更することを明らかにしていた。イランは軍事目的の核開発を否定しているものの、この動きは、イスラエルのバラク国防相が10月に、「イランが備蓄の一部を燃料に使うと決断すれば、8~10カ月以内に軍事行動を起こすという決断を延期する」との発言が影響したためと思われる。
 フィナンシャル・タイムズ紙は、「イランの戦略は2つの動きに基づく。1つは、近い将来、高濃度ウランの製造を飛躍的に拡大させること。2つ目は、濃縮度20%のウランの備蓄を、イスラエルが軍事オプションを考慮する転換点より低く保つこと」という、IISS(国際戦略研究所)のマーク・フィッツパトリック氏の指摘を掲載した。

【国際的な懸念】
 経済制裁、サイバー攻撃、核施設に対する軍事行動のおそれに直面しているイランに対し、オバマ大統領が12日の一般教書演説で外交的解決の圧力をかけたとニューヨーク・タイムズ紙は報じた。また同紙は、確証は出ていないが、イランと北朝鮮は核知識を共有していると多くの諜報当局者が考えていると報じた。ガーディアン紙は、ウランの備蓄が早まるほど各国間協議の緊急性が増すと警鐘を鳴らした。

Text by NewSphere 編集部