【マリ紛争】仏軍が早期撤退できない事情とは

【マリ紛争】仏軍が早期撤退できない事情とは イスラム過激派勢力の掃討を目指し、政府軍がフランスやアフリカ諸国軍らと共に主要都市の奪還を続けるマリの戦いは、未だ終結に至っていないようだ。大国の軍事介入を受け「敗北する前に後退」し、砂漠や山岳地帯に潜んでいる武装勢力は、対策を練りなおしゲリラ戦を展開している。また、長引く紛争の中で、政府軍内での対立が目立つ状況となってきている。
 海外各紙は引き続き紛争の様子や撤退のタイミングを図るフランス軍の微妙な立場を報じている。

【支援受けるも、終結は未だ遠く】
 フィナンシャル・タイムズ紙によると、8日に首都バマコのマリ軍基地でパラシュート部隊と別の兵士らの間で銃撃戦が勃発したという。前者は昨年のクーデターで失脚したトゥーレ前大統領を支持しており、後者はクーデターの首謀者サノゴ大尉の支持派だったようだ。どちらが先に攻撃を仕掛けたかは不明だが、最低1名は死亡。両派の関係は以前から緊迫しており、今回の衝突でその対立の深さが浮き彫りとなった。同紙によると、フランス軍の介入以来、サノゴ氏の政治的影響力は縮小しているものの軍事的権力は維持しているという。

 また、山岳地帯に逃げ込んだイスラム過激派勢力も引き続き攻撃を続けている。ニューヨーク・タイムズ紙は8日と9日に北部の最大都市ガオにある政府軍の検問所において自爆攻撃が起きたと報じている。死亡者は出ていないようだが数名が負傷したようだ。突然の攻撃にパニックを起こしたマリ兵の隙をついて、20名ほどの武装勢力が中心部へ侵入したという。マリ兵がライフル銃などで、フランス軍はヘリコプターで空中から応戦した。マリ兵の対応について、トラオレ暫定大統領はフランスなどの支援諸国に対して詫びる声明を発表すると共に、マリ政府は軍事やその他の支援に対して海外からの協力に頼っていると述べた。

【フランス軍撤退のタイミングは?】
 マリ政府軍は、フランス軍の介入前に劣勢だった記憶や、政府内の対立などのトラウマを抱えており、自立に向けた自信を持ち備えていないとニューヨーク・タイムズ紙は指摘している。また、ウォール・ストリート・ジャーナル紙も、フランス軍が撤退した後に、マリが不安定な状況に再び陥りやすいことを今回のガオ事件が証明していると報じている。フランス軍は以前から4000人規模の軍隊の撤退タイミングを図っており、同事件の直前にも国内の安全管理を3月にはマリ政府軍に引き継ぎたい意向を明らかにしていた。武装派勢力がゲリラ攻撃を強める中、その決断はさらに難しいものとなってくるだろうと報じられている。

Text by NewSphere 編集部