中国ではなぜ大気汚染が止まらないのか?
ここ数週間、中国中央部から東部で発生している深刻な大気汚染を受けて、29日、中国温家宝首相はその対策を講じると述べた。中国政府のウェブページでは、「最近のスモッグに満ちた天候によって、人民の生産活動と健康が影響を受けている」という同首相の談話が掲載された。実際、北京における大気汚染のレベルは、米国で推奨されている正常レベルの40倍危険であり、さらに健康的と見なされるレベルの日は1月にはたった5日しかなかったという。
海外各紙は、中国の大気汚染の実態と原因について報じている。
【生活への影響】
フィナンシャル・タイムズ紙は、視界不良のため飛行機が欠航になったと報じている。さらに、マスクや空気浄化機の売れ行きが極端に伸び、品切れ状態になっているとしている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、北京のある小児科医院で今月に治療を受けた子どもが9,000人という記録的な数となったと報じている。その多くは、インフルエンザ、肺炎、気管炎、気管支炎、喘息であったという。また中国の国営メディアによると、2週間前に浙江省東部では大気汚染により見通しが悪くなったために4時間もの間家具工場の火災が発見されずにいたという。
【問われる政府の対応】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、習近平氏が新指導者として指名を受けた昨年11月の段階で、既に大気汚染問題の解決に向けて言及しているものの、中国のトップは経済成長力を犠牲にするような方策を嫌うだろうと指摘している。
また、全国人民代表大会の代表の一人がソーシャルメディアで法整備が必要であるとする意見を述べ、大気汚染に関する投票を行ったところ、32,000対250の大差で賛成意見が圧倒したという。ただし、中国では法が厳格に施行されず、それを監督する機関もないため無益だとする指摘もあったという。
フィナンシャル・タイムズ紙は、中国政府が何年もの間、環境改善を表明してきたものの、結果は悲惨であり、中国政府の怠惰と無能に対して大衆の怒りが高まってきていると論じている。選挙されることのない指導者が、都市部における平均的な年収の1.5倍に相当する高価な最新型空気浄化機を使用していることもその怒りに拍車をかけているという。
一方で、人民日報傘下のグローバルタイムズ紙(中国)は、大気汚染が不合理なエネルギー消費構造や産業構造、中国の制度上の問題に起因する可能性があるとしながらも、外国でも中国でもほとんどの民衆が大気汚染の原因となっているのだから、青空を取り戻すための責任は各自で引き受けて生活スタイルを改善するべきであり、他者を責めるべきではないとしている。当然のことながら政府指導者の責任については言及されていない。ただし、環境保護が経済成長の速度を緩めてでも解決すべき課題であるとしている点は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が挙げた論点との関連から、注目に値する。