イスラエルがシリア空爆に踏み切った理由は?

イスラエルがシリア空爆に踏み切った理由は? 30日、イスラエル空軍機がシリア領内を空爆したと伝えられた。ここ2年間のシリア紛争においてイスラエルがこのような介入を行うことは比較的珍しいが、ここ数日間、イスラエル機のシリア領空侵犯増加や、イスラエルがアイアンドーム対空迎撃システムを北部国境方面に移動させるなど、緊張の高まる兆候があった。

 イスラエルは攻撃についてコメントを拒んでいる。西側当局によると、この攻撃は、シリアからレバノンのイスラム武装勢力ヒズボラへ送られる、ロシア製SA-17S対空ミサイルの車列を狙ったものであるという。一方シリアは、攻撃されたのは武器輸送車列ではなく首都ダマスカス郊外の研究施設であり、施設に甚大な損害が出たほか2人が死亡・5人が負傷したと発表。「シリアの主権の侵害」「イスラエルの犯罪の歴史への新たな追加」などと非難した。

 各紙は、2007年シリアで建設中の原子力施設と疑われた施設の攻撃、昨年10月スーダンでの兵器工場攻撃など、イスラエルは以前から周辺諸勢力の軍備増強に敏感であると解説した。イスラエルはシリア内戦の混乱によってシリア政府の化学兵器が流出する事態も強く懸念していたほか、特に化学兵器などでなくとも戦場の「ゲームバランスを一変させる」おそれのある兵器について注視していたと報じられている。今回も、ヒズボラに対空兵器が渡れば将来の空襲作戦に悪影響が出ると憂慮したという。またウォール・ストリート・ジャーナル紙は、このような攻撃に際しイスラエルは「敵意のエスカレート」を防止するため、ノーコメントを保つのを常道としていると指摘した。

 なおシリア政府がヒズボラに兵器を供与する理由として、フィナンシャル・タイムズ紙は政権の健在を誇示したいためであると論じている。

Text by NewSphere 編集部