米アマゾンの決算、予測を下回りながらも支持されるわけは?
米インターネット小売大手アマゾンは29日、第4四半期(10−12月)決算を発表した。売上高は前年同期比22%増の212億6800万ドル(約1兆9300億円)、純利益は同45%減の9700万ドル(約88億円、1株当たり21セント)だった。また、営業利益は同56%増の4億500万ドル、粗利益率が0.5ポイント増の3.2%となった。 売上高、純利益ともにアナリスト予測(222億5000万ドル、1株当たり純利益27セント)に達さなかったものの、利益率の改善をみせたことが投資家らに評価され、同社の株価は決算発表後の時間外取引で最大約10%上昇した。
海外各紙は、顧客第一主義のアマゾンの経営方針や、それに対する投資家らの寛容な支持傾向に注目している。
【2013年も顧客を最優先】
ニューヨーク・タイムズ紙によると、アマゾンは「顧客を最優先に考えることが株主たちに継続する価値を提供していける唯一の方法」という方針のもと、送料や価格の値下げに努めてきた。また、フィナンシャル・タイムズ紙によると、中国やヨーロッパ市場の開拓にも力を入れており、最近ではスペインとイタリアでのサービスを開始した。国内外の顧客との距離を縮めるべく、サービスの拡大を行なっているようだ。さらに、5年前に立ち上げた電子書籍事業はあっという間に急成長し、今や数十億ドル規模の部門となっているという。今後も新モデルを投入し、将来的な収益につながるコンテンツの販売拡大(音楽、電子書籍、映画)に繋げていく意向だ。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙も、同社は長期的な売上確保や顧客ロイヤリティのためであれば目先の利益は当面犠牲にする覚悟だ、という言葉を取り上げている。2013年も引き続き発送センターの新設、データセンターの拡充、プライム・ビデオストリーミング・サービスの拡大、キンドル・タブレットの拡充に投資を続けているとし、将来に向けて大規模な投資を行なっているために現時点では利益が圧縮されていると報じている。一方で、今回の決算で利益率が改善したのは、クラウドやウェブサービス部門などのITを活用したビジネスが成果を出し始めてきたという。
【アメリカンドリームの実現なるか】
顧客第一としたビジネススタイルに対する投資家らの反応は様々だ。フィナンシャル・タイムズ紙は、いくつかの実店舗がアマゾンや大手ディスカウントショップのターゲットなどのネット上で小売業を営む企業に対して対抗する価格設定に踏み切ってきている点を挙げ、大規模な投資を続けているアマゾンが顧客流出を食い止められるかが見ものだという意見を報じている。ニューヨーク・タイムズ紙も、利益がほとんどない程の低価格に顧客が慣れてしまったら、そこから値上げしていくのは難しいとするアナリストの声を取り上げている。実際に、価格を下げ続けるアマゾンに対して投資家の理解が得られずに2005年には1年間で株価が40%下落している。
一方で、「夢が掲げられている限り、株価は上昇するだろう」というアナリストの声もあるとニューヨーク・タイムズ紙は報じている。現に、少しずつではあるが利益率の改善を見せていることを高く評価する声は少なくないようだ。アマゾンがネット上で展開する夢がいつか、莫大な利益を生み出すことを信じ、見守っている投資家らの存在によって、同社の株価は暴落時から700%と大きく跳ね上がってきたという。
今後の見通しについては、2013年第1四半期は売上高を前年同期比14〜26%増の150億〜166億ドル、営業利益(損失)を2億8500万ドルの赤字から6500万ドルの黒字と予測している。カリフォルニアなど売上税の徴収を義務付ける州が増加しており、値上げを余儀なくされ、在来の実店舗に対する利点を急速に失いつつあるなかで今後の展開が注目される。